研究課題/領域番号 |
23530098
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平田 健治 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (70173234)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / ドイツ |
研究概要 |
まずは、研究実施計画にも記したとおり、Jansen氏を訪問し、彼の業績・主張に対する質問と応答、現在の問題意識等のインタビューができた。このインタビューの準備作業として、彼の業績の読み直し、帰国後の、読み返しを通して、彼の問題意識の大枠の理解を深められた。帰国後は、これも研究実施計画に記したとおり、部分草案の理由書、第一次委員会でのその審議記録、Mugdanによる第一草案の審議記録を経由しての、ドイツ民法成立までの変遷とその背景を比較分析することで、現在のドイツ民法や、それを参照した日本民法の歴史的制約性をより緻密に把握することができるに至った。具体的には、部分草案が普通法の訴権システムをなぞる形で近代化しようと試みつつ、そこでの直接訴権と反対訴権の異質性を意識しつつ、前半と後半で分別した規律を試みたが、この問題意識は、事務管理という統一的制度として、不当利得、不法行為と区別されるベクトルが働くことによって、徐々に相対化されていった過程(跛行性から同期化)とみることができる。まさにこのような潜在的ねじれが、現代的諸問題(管理者の注意義務の程度、損害賠償、準事務管理)をとらえ、解決するために、有用な視点を与えることもわかってきた。Jansen氏の研究は、法定債権関係全体の再構成にあることがわかったが、それは、おそらく、教授資格取得論文である「責任法の基礎付け」(2003)で、不法行為の現代的再構成を提案していることから始まっている。この文献の読み込みも開始した。以上の成果は、ほぼまとめており、所属大学紀要に投稿し(5月)、7月には公表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Jansen氏へのインタビュー、彼の業績の読み込み、立法過程記録の読み込み、などを通して、一見、大陸法の一制度として安定的な地位を保っているようにみえる「事務管理」制度が、他の制度、とりわけ不当利得、不法行為との歴史的経緯を伴うもつれを引きずり、なお現代的問題、その解決、再構成につながる手がかりとなっていることが、実証的に確認できたことが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた手がかり、すなわち歴史的な制約性と現代の時点での体系的見直しの関連性を多様な角度で、慎重に推し進めていきたい。それとあわせて、不法行為との関連、他国法、他法系にも目を向けていきたい。Jansen氏の研究は、事務管理法の各時代での機能・概念の布置、前後の時代との連続・非連続をも分析している。この観点は、不定型な内容をもつこの法分野の分析に有用であると考えている。そのため、彼の分析を参照しつつ、この分析を基本に、視覚化、構造化する作業を考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
おおむね物品費に当てる予定であるが、本年度分を若干繰り越した関係で、予算に余裕ができるため、初年度には実施していない国内調査旅行も複数回実施可能となると考えられ、検討対象としたい。
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