研究課題/領域番号 |
23530099
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松井 和彦 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (50334743)
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キーワード | 不安の抗弁権 / 法律効果 |
研究概要 |
平成24年度は、3年間にわたる本研究計画の2年目にあたる。当初の研究計画に即し、1年目に引き続いて、不安の抗弁権の法律効果に関するドイツ語文献を中心に資料収集を行い、それらを精読し、ドイツにおける判例・学説の状況を把握する作業を進めた。とりわけ、平成23年9月から平成24年9月中旬までは、ドイツ連邦共和国・ケルンに滞在し、ケルン大学において、不安の抗弁権の要件充足の効果と行使の効果をめぐるドイツ法の状況を調査した。平成24年9月に帰国した後は、所属機関である大阪大学において、ドイツで収集した資料の精読および分析・整理をさらに進め、これと並行して、日本法の状況を調査した。 この研究成果の一部として、後掲「研究発表」の〔図書〕欄に記載された論文を執筆し、公表した。本論文は、これまでわが国においてほとんど議論されたことのなかった、不安の抗弁権の要件充足による効果と権利行使の効果を扱ったものであり、重要な意義を有するものと考える。さらに、本論文では、2009年のドイツ連邦通常裁判所判決で示された新しい判断を扱っており、ドイツにおける最近の理論状況を紹介したという点でも、一定の価値を有するものと考える。さらに、現在、わが国において債権法改正作業が進められており、その中で、不安の抗弁権に関する規定を置くことが検討されている。不安の抗弁権の法律効果をどのように捉えるのかを明らかにすることは、この法改正作業にも一定の寄与をすると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不安の抗弁権の重要な法律効果のひとつについて、ドイツにおける理論状況を整理し、最近の新しい裁判例を踏まえて検討を加えた論文を執筆し、公表した。このことにより、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間、本研究はおおむね順調に進展している。そこで、最終年度となる平成25年度も、引き続き研究計画に従い研究を進める。具体的には、不安の抗弁権の効果をめぐるドイツの議論(判例・学説の状況)を調査、分析、整理し、わが国の不安の抗弁権論にとっての示唆を得て、わが国の解釈論に結びつける作業である。
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次年度の研究費の使用計画 |
日本法はもちろんのこと、比較法的検討の対象であるドイツ法に関する書籍の購入費用、資料を整理し論文を執筆する際に必要となる機器、文房具等の購入費用、現地(国内の他大学、国外の研究機関等)に赴いて資料収集・調査等を行うための出張旅費に使用することを計画している。
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