研究課題/領域番号 |
23530100
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松川 正毅 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (80190429)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | フランス法 / 公証人の実務 / 遺産管理 / 遺産分割 / 後見 |
研究概要 |
第一に、フランス法における相続財産の管理について、パリとトゥールーズで文献情報収集を行った。 第二に、パリで、公証人から実務の傾向を聴取し、相続財産の管理と遺産分割への役割について説明を受けた。この観点は、興味深いものがあり、法的根拠と実務の関係について、深めることの重要性を知った。特に、相続において、遺産管理とともに、債務の清算が公証人によって行われており、わが国と同じ、プラス財産とマイナス財産を別々に承継するとする法制度の中で、公証実務として清算を実現している点が確認された。今後、このメカニズムの探求が残されている。 当初の計画である「遺産の管理」の研究に先立ち、具体的な問題である「相続財産の清算」について、フランス公証実務を学んだ。フランスでは、すべての相続人の代理人となる方法によって、専門家が清算を実現している。わが国の解釈では、双方代理の問題があると思われるが、フランス法における、この実務の実定法的な根拠を探求する作業が24年度に残されている。 第三に、死亡に至るまでの間に、判断能力を失ったり、衰えたりした場合の財産管理にも、家族構成員以外の第三者が代理人となる事例が、フランスでも始まりつつあるが、その問題点と実務の傾向について、パリ大学のグリマルディ教授から、情報の提供を受けた。高齢者の財産管理については、後見とはことなり、契約が行われることが制度として考えられているという情報を得た。 第四に、トゥールーズ大学にて、「老人と財産」と題して、研究会発表を行い、生前から死亡後の遺産分割に至るまでの、一連の財産管理についての考え方(仮説)を示し、議論を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)研究テーマの分析の対象となりうる文献収集、情報収集は順調に進んでいる。2)遺産の管理に関しての前提問題として、遺産の清算に関して、フランス公証実務の重要性を確認した。この点に関して、論文にまとめることの準備が完了した。3)遺産の管理に関しての実定法的研究は、文献収集にとどまり、進展していない。4)トゥールーズ大学での学会で、2012年2月29日に「老人と財産」と題して発表を行い、一連の財産管理の必要性と、家族構成員の関与の重要性に関する自説を展開した。その成果は、トゥールーズ大学のホームページ内の論文欄に掲載される予定である。5)制度としての分析は順調に進んでいるが、実定法的な根拠分析を進めることが、課題として残っている。民法その他の関連する法がどのように規定しているのか、その探求が残されている。
|
今後の研究の推進方策 |
1)文献研究を進めることに留意する。特に、遺産の清算についての解釈論をまとめる必要性があると考えている。そのために、フランスの学者の指導を受けることを考えている。2)フランスの公証実務の研究を、遺産の清算から、管理へと広げる予定である。そのために現地で、調査研究を行う。3)遺産の清算、分割に関して、公証実務と法とを結びつける作業を行い、論文としてまとめる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1)海外調査研究費(旅費、滞在費)2)国内情報収集のための旅費3)資料、文献に要する費用4)情報、文献整理を、アシスタントに依頼する費用
|