研究課題/領域番号 |
23530102
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松原 正至 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (10252892)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | LLC / LLP / 会社法 / 有限責任事業組合 |
研究概要 |
平成23年度においては、わが国におけるビジネスストラクチャーの制度・実体に関する調査・研究ならびにステークホルダー論の研究を主として行うとともに、関連文献を収集した。わが国に関しては、LLCの普及があまり進んでいないことの原因を検討するとともに、現在進んでいる会社法の改正作業において、多様なビジネスストラクチャーの活用においてもガバナンスと情報開示が重要な課題になることが想定され、それについて現在論考をまとめている。また、米国については、Bay Center Apartments Owner, LLC v. Emery Bay PKI, LLC, 2009 WL 1124451 (Del. Ch.)について研究を行った。本件はデラウェア州LLC関係者の「誠実かつ公正な取扱い」義務の違反について争いとなった判例である。米国ではLLCは二重課税の回避とメンバーの責任免除を理由として広範に利用さているが、特に責任免除に関して、約款にてどこまでの責任が免除されうるのかということにつき、本件は契約法上の信義則ともいうべき「誠実かつ公正な取扱い」義務は免除できないとした。本件については、平成23年8月の神戸大学商事法研究会信州合宿研究会において報告し、その内容を公表することにしていたが、出版社の都合により平成24年6月に公表される予定である。英国については、権威ある文献であるPalmer's Limited Liability Partnership Law, 2d ed.を入手し、これに基づいてLLPの研究を行っている。特に、英国では主として監査法人や弁護士法人等の専門家法人に利用されており、わが国の有限責任事業組合や監査法人との比較を主たる目的として研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LLCやLLPなどのビジネスストラクチャーについて、小規模事業の円滑な運営と促進を実現させるためのツールとしてとらえ、その法制度のあり方を研究することが目的であるが、この点につき平成23年度は、わが国の状況の把握と米国と英国の比較につき次のように研究を行った。(1)わが国については、会社法の改正、特に中間試案や、東日本大震災後の小規模事業の促進策につき、現状の問題点の把握とその解決に向けた法制度の実効性について検討した。(2)米国については、判例上、LLCのメンバーの責任免除規定の有効性が大きな問題となっており、それに関する代表的な判例を検討した。(3)英国については、LLPに関する法制度が2006年の会社法改正により非常に大きな変革を余儀なくされたため、その現状把握に努めるとともに、小規模事業に用いるツールとしての有効性を検討した。これらの研究については当初の研究計画通り、おおむね順調に進展しているが、特に(2)と(3)については非常に時間を要する作業であるため、より効率的に作業を進めることを考えている。また、研究実施計画に記載したテータベースの作成については未だデータ数が少ないため、これについては平成24年度以降作業を急ぐ予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に引き続き、研究全般につき、平成24年度においても同様の問題意識をもって、主として文献ベースにて研究を進める。さらに、平成24年度においては英国における法制度を主として研究することとし、英国のCompany HouseとLeeds Metropolitan universityまたはLondon School of Economics(LSE)において資料収集ならびに情報収集を行う予定にしている。ここで得られた知見をもとに、平成24年度は英国の法制度について一定の研究成果を挙げることとする。また、データベースについては、特に上記の作業から得られた英国法に関するデータをとりまとめる予定である。また、米国法については引き続き判例の分析を行うとともにその成果を公表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度については1599円の残高が発生した。これは洋書の為替レートの変動等による価格の変動がその原因である。平成24年度においてはこの残高とあわせて研究費を使用することとし、研究実施計画に沿って、主として文献の収集と外国(英国)への資料収集の旅費として使用する予定である。
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