わが国の民事裁判手続で裁判官に認められている裁量的判断について、それが適切になされるよう確保するためには、裁量がどのように規律されるべきかを、ドイツの民事訴訟における裁判官の裁量に関する理論・実務を手掛かりに考察した。その結果、わが国でこれまで裁判官に裁量が認められると考えられてきた場面でも、裁判官に複数の判断からの選択の自由を認める「裁量」が許される場合かどうかが精査される必要があることと、そうでない場合には法解釈による判断基準の明確化の努力が必要であること、裁量が許される場面でも完全な自由が認められるわけではなく、法律の目的や法原則などによる制約と制御可能性があることが明らかになった。
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