研究課題/領域番号 |
23530106
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研究機関 | 尚美学園大学 |
研究代表者 |
崔 光日 尚美学園大学, 総合政策学部, 教授 (60360880)
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キーワード | 民法 / 製造物責任法 / 中国 / 韓国 / 台湾 |
研究概要 |
今年度は、本課題応募時の研究計画(現地調査)を変更して、25年度に予定されていた対象国の研究者を招いての研究会を前倒して2013年2月23日に行った。研究会には、韓国から2名(延世大学の金相容教授、朴東*(*「王」偏に「眞」)教授)、台湾から1名(国立台北教育大学の郭麗珍教授)が参加した。中国からは、最高法院(最高裁)から2名(最高法院の応用法学研究所研究者と民事裁判廷裁判官)が参加する予定だったが、周知の日中関係の影響(現役裁判官の海外出張の制限)のため、欠席となった。 金相容教授には韓国の製造物責任法の現状(法制定以来の法解釈と判例の状況)を紹介してもらい、朴東*(*「王」偏に「眞」)教授(去年8月発足した製造物責任法改正委員会の委員長)には、製造物責任法改正の進捗状況について、当委員会が起草した改正案を中心に紹介してもらった。郭麗珍教授には、台湾の製造物責任法の現状(法制定以来の判例と法解釈論の展開と問題点)について紹介してもらった。 上記の研究会後、台湾の製造物責任法の現状の確認と問題点の解明のため、2013年3月14日から18日まで台湾を訪問して、書店と図書館で関連資料を収集し、最高法院の裁判官をインタビューした。 中国については、他の研究出張の機会を利用して、最新の文献・資料の収集をした。 初年度と今年度の研究に基づいて、本研究の中間まとめとして、今年(6月1日)の第76回比較法学会(社会主義法・アジア法部会)で、「中国・韓国・台湾の製造物責任法の現状と特徴」の報告をすることになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究・調査を通じて、昨年度の調査・研究で得られた成果の上にさらに新しい情報が得られ、対象国の現状に対する理解を深めることができた。 とりわけ韓国については、製造物責任法改正案が被害者の証明責任軽減のため、現行法では認められていない欠陥と因果関係の推定(事故時の欠陥ではなく、製造物の引渡し時の欠陥まで推定)規定を設け、さらに製造業者に対する情報提出命令制度を新設するといった、重要な改正を目指していることおよびその経緯(議論の経過と改正の理由)がわかった。 台湾については、前記の郭麗珍教授の報告と最高法院の裁判官のインタビューを通じて、学説と判例の状況に対する理解を深め、さらに次年度の調査・研究の主要な課題(開発危険の抗弁規定の解釈と適用状況、民法の不法行為における欠陥・因果関係の推定規定の製造物責任訴訟における準用。製造物責任法には因果関係の推定がない)を明確にすることができた。 中国についても、文献・資料の収集とその分析を通じて、学説の状況に対する理解をさらに深め、次年度の調査・研究の課題(立法上曖昧になっている販売者の責任性格、証明責任の負担ー法律上の推定または事実上の推定)を明確にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進においては、韓国と台湾については、前記の研究会と文献・資料の研究により明確になった問題点・課題に焦点を当てて現地調査をし、中国については、可能ならば研究者を日本に招いて研究会を行い、困難な場合には、現地に赴いて調査・インタビューをする。 韓国については、製造物責任法改正作業の動向を常に把握し、適切な時期(前記の改正委員会は、法務省と関係官庁との調整を行い、公聴会などでの検討を経て、政府案として確定して、今年中の国会への上程を目指している)に現地に赴いて、現地調査と最新資料の収集を行う。 台湾と中国については、引き続き学説の状況の把握に努めながら、裁判実務における製造物責任法適用状況を中心に現地調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究費は項目別では、計画とおりの使用ができなかったが(物品費余剰約20万円、旅費超過約1万5千円、人件費・謝金超過約5万円、その他超過約5万円。残額約8万5千円)、全体としては、今年度請求額の範囲内での使用ができた。 次年度には、課題応募時の研究費使用計画と交付申請時の助成金配分額に基づいて研究費を使用する。具体的には、物品費(図書・判例集などの資料)170,000円、旅費(現地調査または中国研究者の招聘旅費)700,000円、人件費・謝金(研究会原稿翻訳謝礼金など)220,000円、その他(研究費開催費用など)110,000円を使用する。
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