本課題応募時の研究計画を変更して、本年度に予定されていた、研究対象国の研究者を招いての研究会を前倒して前年度に実施し、本年度には、その研究会の成果の上で、前年度に予定されていた現地調査を行った。2月15日から19日まで中国(北京、石家庄)、3月13日から16日まで韓国(ソウル)訪問して、資料収集と研究調査を行った。 中国では、最高人民法院の劉竹梅裁判官(民事裁判2廷副廷長)をインタビューして、中国における製造物責任法の運用状況について、責任要件の証明責任を中心に調査し、また、侵権責任法(第5章製造物責任)に関する司法解釈(製造物責任を含む)が起草中であるとの情報が得られた。その解釈における、本研究の課題の一つである製造者責任(無過失責任)と販売者責任(過失責任ー実質的な無過失責任)との関係および責任要件(欠陥と因果関係)の証明責任についての規定は、今後注目したいところである。石家庄(毒ミルク事件の発生地)では、消費者協会を訪問して、毒ミルク事件における訴訟・製造物責任問題についての調査を行ったが、政治的な原因等により訴訟にいたらず、製造物責任の追及はなかったこと(製造物責任を含む法の適用に対する政治の影響・制約)が分かった。 韓国では、前年度に行われた本研究課題の研究会での報告者である延世大学の金相容、朴東鎮(製造物責任法改正委員会委員長)両教授を訪問して、主に去年以来の韓国の製造物責任法改正の動向について調査した。去年の研究会で報告された製造物責任法改正案は、政府案として確定されず、国会審議への上程がなかったことと製造物責任法改正の議論・改正案作成が継続的に行われていることが分かった。 前年度の研究会とこれまでの研究成果に基づいて、後記(研究発表)のように比較法学会(6月)で報告し、民事研修(676号)に研究論文を発表し、また、韓国消費者法学会(11月)で報告をした。
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