研究課題/領域番号 |
23530108
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
西川 佳代 國學院大學, 法学部, 教授 (00276437)
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キーワード | 民事執行 / 起訴責任 |
研究概要 |
1. 昨年度から引き続き、民事手続過程における「起訴責任転換」について、理論的解明を訴訟法および執行法理論から行った。特に、ドイツにおける先駆的研究であるBettermanの理論が、「抗弁事由の希少性」により起訴責任転換を導くことに対する反論として、事前プロセスにおいて当該当事者がやるべきこと(行為責任)を尽くしたか、という観点からの検討を進めている。この行為責任については、すでに「手続保障の第三の波」理論にその萌芽があるものの、具体化あるいは規範化の段階で留まっていることから、より発展的に展開できないか、および、手続的正義との関連について検討した。 2. 昨年に引き続き、判例データベースなどから、執行文関連訴訟や請求異議の訴え、将来給付の訴えなどをピックアップし、判決あるいは決定だけではなく、当該訴訟のプロセスを解明することに努めた。 3. 特に執行文については、日本から制度を導入した台湾および韓国について、実務の状況および理論の状況についてヒアリング調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
起訴責任をめぐる文献収集と整理および理論的検討については順調に進行しているが、事例研究の分野および比較法の分野が遅れている。 長期休暇に本来予定していた海外出張と実態調査ができず、また、研究機関の変更に伴う雑務により十分な時間が取れなかったことがその要因である。
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今後の研究の推進方策 |
民事執行以外の分野で、起訴責任転換の発想が妥当するのかを、判決手続やADRおよび訴訟外の紛争行動も含めて検討するために、本年度十分に展開できなかった事例研究に重点をおく。特に弁護士面接調査については事例を重ねたいと考えている。 ドイツおよびオーストリアの執行法理論における起訴責任転換理論の位置づけおよび展開について、引続き検討し、これらから得られた視点から、上述の事例を分析する。 第三の波、および、手続的正義に関連する法理論的な角度からの分析をさらに進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
司法制度、民事手続、法社会学や手続的正義などの基礎法学に関連する洋書・和書の購入が見込まれる。また、これらをテーマとする学会や研究会への参加および資料収集、実態調査のための旅費を必要とする。 実態調査にあたっては、資料整理をはじめとして補助者を雇用するため、謝金を必要とする。
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