研究課題/領域番号 |
23530113
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
田中 淳子 愛知学院大学, 法務研究科, 教授 (00308818)
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研究分担者 |
和田 直人 静岡大学, 法務研究科, 准教授 (50380209)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 筆界特定 / 所有権界 / ADR / 土地家屋調査士 / 不動産登記 |
研究概要 |
これまで民法・実体法の体系の中で、筆界特定制度、あるいは境界紛争ADRによってもたらされた解決との理論的整合性、あるいは結論に対する実体法上の理論的裏づけについて具体的かつ詳細な検討がなされた研究成果はない。土地境界紛争を適正かつ合理的に解決するため、あるいは地図整備を促進させるためには、表示登記申請の実務、筆界特定制度、境界紛争ADR、筆界確定訴訟の相互のつながりを意識することが重要であると考えられるが、実際には、これらの制度の連携は十分であるとはいえない。本研究は、実体法領域、手続法領域、実務領域という横断的領域にかかる問題に対し、総合的な考察に基づき理論的基盤を提供しようとするものであり、土地境界にかかる様々な問題解決について、高い効果が期待できる。 そこで平成23年度計画に従い、土地家屋調査士会と法務局との間でのADRと筆界特定の手続との相互連携に向けた協議が、14条地図作成作業への活用も視野に含めたものとして進められている愛媛県における14条地図作成作業(地籍調査事業)の実態調査(実務家へのヒヤリング)を行った(平成23年12月9日、10日実施)。このような具体的な取り組みを「ひとつのモデルケース」とし、そこで抱える問題点を明らかにした。また、制度間の効果的な連携の可能性を検討することが本研究の目的の一つでもあるため、愛媛県土地家屋調査士会が設置するADR機関(境界問題相談センター愛媛)と、松山法務局における筆界特定の手続との連携のあり方について実態調査(関係各所へのヒヤリング)を行った(平成24年3月3日実施) 。そこでは登記実務上の問題点(論理、制度の運用について研究者と実務家、関係当事者間にかなりの相違があり、問題解決には制度の抜本的な改正も必要となることが明らかになった)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画は、土地家屋調査士会と法務局との間でのADRと筆界特定の手続との相互連携に向けた協議が、14条地図作成作業への活用も視野に含めたものとして進められている愛媛県における14条地図作成作業(地籍調査事業)の実態調査(実務家へのヒヤリング)を実施し、「ひとつのモデルケース」を構築すること、また、制度間の効果的な連携の可能性を検討することが本研究の目的の一つでもあるため、愛媛県土地家屋調査士会が設置するADR機関(境界問題相談センター愛媛)と、松山法務局における筆界特定の手続との連携のあり方について実態調査(関係各所へのヒヤリング)を実施することであった。いずれの調査も実施し、平成23年度の研究目的であった登記実務上の問題点(論理的検証を必要とする問題)を明らかにすることができた。 具体的には、境界確認の実務の実際、14条地図作成作業・地籍調査作業手順・工程のヒアリングを通じて研究者、実務家、関係当事者間では制度の理解と運用にかなりの相違があることが明らかになった。また、境界問題相談センター愛媛の現状ならびに 境界問題相談センター愛媛と松山地方法務局(筆界特定制度)とおの連携状況についてもヒアリングを行い、関係組織、実務家間で運用実態とその問題点が明らかになり、研究計画に従って順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度実施の調査に基づき、田中が実体法上の観点からの分析を、和田が手続法上の観点からの分析を行い、交錯領域につき相互に分析を行う。さらに、上記の分析を踏まえ、適宜の補充調査(愛媛地域)および他地域(普遍性の検証)での実態調査(実務家へのヒヤリング)を実施する。具体的な調査地域として、愛媛県と各種条件(地理的条件、地域調査士会の組織的条件、地図整備の状況等)が近い岡山・宮城等の地域を予定している。なお、調査地域としては、地方中核都市を念頭においているのは、いわゆる三大都市圏等においては、地図整備の状況があまりにも悪いため(下記グラフに示される地籍調査の進捗率と地図整備の状況とは相関関係があると考えて良い)、調査地域としてのサンプルに適さないと考えるからである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究計画は、適宜の補充調査(愛媛地域)および他地域(普遍性の検証)での実態調査(実務家へのヒヤリング)を実施する。したがって、岡山、宮城のほか、九州・沖縄地方への調査も計画している。そのための旅費の支出を予定している。また、調査の実施に伴い、調査の補助、専門家の意見聴取、会議費用等、調査の取りまとめにかかわる経費の支出も予定している。研究調査に必要と思われる関係書籍の購入や備品の購入等の購入にも研究費を支出する予定である。
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