研究課題/領域番号 |
23530116
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
瀬谷 ゆり子 桃山学院大学, 法学部, 教授 (00226680)
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キーワード | 業者ルール / 民事効 |
研究概要 |
平成24年度は、一般投資家に向けられた金融商品取引法制における消費者保護的な救済方法の是非という側面から、投資勧誘等において問題となっている金融商品取引業者の行為規制違反に対する民事効についての検討を行った。 研究の焦点を、法令違反に対する私法上の効果に置き、私人による法規制のエンフォースメントとして、規制に違反して締結された契約等の無効あるいは取消が認められる場合、あるいは不法行為の成立要件となる違法性を導くことで、当該契約ないしは取引の当事者である投資者の救済の余地に絞った。金融商品取引法において業者に向けられた行為規制は、取締法規として行政による監督権限行使の根拠とされる。しかし、業者ルールに関しいわゆる消費者保護的な行為規制と位置づけられるものについては、その違反が私法上の効果に何らかの影響を及ぼすものとすれば、業者ルールのエンフォースメントとして行政規制とあわせた効果が期待できるためである。 平成24年12月1日に、立命館大学商法研究会において、「金融商品取引法制における業者ルールと民事効」というテーマで研究報告を行い、この報告を論文にまとめて、桃山法学に投稿した(「金融商品取引法制における業者ルールと民事効」桃山法学20・21合併号371頁~395頁(2013年3月))。 また、金融商品取引法の分野の情報収集については、早稲田大学GCOEの金融商品取引法研究会に可能な限り出席するように努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の成果としてまとめた「金融商品取引法制における業者ルールと民事効」は、当初予定していたテーマである。当初、独占禁止法のルールについて比較する予定であったが、むしろ消費者法的な規制として、金融商品販売法や特定商取引法 との接点を探ることで、業者ルールの横断的な法規制について整理することができた。 独占禁止法を含めたより広い分野において、エンフォースメントと考えられる違法行為に対する「民事効」の検討は、24年度の成果を基礎にすることで、今後展開しやすくなると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、当初予定していた、業者ルールのエンフォースメントと考えられる違法行為に対する「民事効」の検討を行った。研究の過程から、金融商品取引法の分野における消費者保護的な法規制の扱いについて、消費者法制との横断的な検討が必要であると感じた。したがって、本年度は、この点をもう少し掘り下げる予定である。 さらに、平成23年度に行った金融商品取引法違反を行ったことによる会社の行政責任(金銭的な制裁)が生じた場合に、会社が負った出捐(課徴金等)を、実際の行為者である会社取締役に負担させるものとして、取締役の会社に対する責任(会社423条等)の対象と考えるべきなのかについても、一定の方向性を示しておきたいと考えている。 この点について、研究会等で問題提起をしつつ方向性を探っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
最新判例を含む資料・情報を集めるために、データベースは欠くことができないので、そのための利用代金の充てるほか、法改正に伴う書籍の改訂版を購入する。 また、東京の金融商品取引法研究会に出席するための大阪・東京間の出張旅費を計上する予定である。
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