研究実績の概要 |
平成26年度は、主として指図権者等による権限の行使において受託者が求められる情報提供義務および指図権者等の費用償還請求権について、ケンブリッジ大学、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの信託法研究者との意見交換ならびに様々な資料にもとづいて、検討を行った。 指図権者等が指図権または同意権を適切に行使するためには、受託者からの適切な情報提供が必要な場合が考えられる。オフショアにおいては、プロテクターに対する受託者の情報提供義務を規定する制定法が多くみられる。たとえばベリーズ法においては、「受託者は, 書面による閲覧請求を受けた時から合理的な期間内に, 合理的な範囲で, 信託財産の状況およびその額ならびに信託の管理行為に関する完全かつ正確な情報」をプロテクターに提供しなければならないと規定している。 受託者は, 信託の本旨にもとづく善管注意義務の一環として, 指図権者等が信託の目的に適合するように指図権等を行使することができるように協力する義務を負っていると解すべきである。ただし, 指図権者等がいかなる情報を有しているか, 受託者は必ずしも容易に知りえないので, 指図権者等から請求があった場合にのみ, これに応じて情報を提供しなければならないとの結論に達した。 また、プロテクターがその権限を行使するにあたって要した費用について、信託財産に対する費用償還請求権を認めるオフショアの法を検討し、指図権者が権限の行使のために必要な費用を負担したときは、受託者と同様に費用償還請求を認めることを検討した。
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