本年度は、平成27年1月26日、公益財団法人日本証券経済研究所大阪研究所における証券経済研究会において、「貸株取引の決済制度改革」と題する研究会報告を行った。 また、ここでの議論を経て、平成27年4月同じく公益財団法人日本証券経済研究所発行の『証研レポート』1689号(2015年4月)において、「貸株市場の決済制度改革」と題する論文を掲載した。 発行会社の基準日をまたいだ貸株取引を行うことによって、一時的に株式を借り入れた者が株主名簿上の株主になることがある。香港であった事例では、ある親会社が子会社を完全子会社化するべくおこなった株式の買い増しに、貸株取引で株主となった借主が反対の議決権を行使し、完全子会社化はならなかった。この完全子会社化の失敗によって、発行会社の株価が下落した。当該株式会社の株式を借りていた借手は、株価が下落したところで反対売買を行って決済し、利益を得たとされる。 本稿では、このような問題が引き起こされる可能性がある貸株取引について考察した。貸株取引とはどのような制度か、貸株取引にはどのような問題があるか、近年行われている、各国の貸株取引の決済制度改革はどのようなものか、日本の改革はどのような制度であり、日本における貸株取引の決済制度改革について、実務的な側面および法的な側面からも調査し、考察を行った。 貸株制度を利用したエンプティ・ボーティングを研究の対象とする前提として、貸株取引の制度を理解することは不可欠であったため、本研究を行った次第である。
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