研究課題/領域番号 |
23530121
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
星野 豊 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (70312791)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 信託 / 知財信託 / 国際信託 / 信託法理論 |
研究概要 |
今年度は、当初計画に従い、国際的な知財信託に関する理論上及び実務上の問題点の抽出に、時間と精力を傾注した。その結果、当初において予測していた各局面における問題点について、概ね以下のようなことが明らかになった。 第1に、信託の基本構造に関する理論構成について、平成18年の現行信託法成立前において対立していた複数の信託法理論の相互関係については、現行信託法が理論的に中立の立場を採用したことから、特定の信託法理論が他の信託法理論に対して理論的に優越することがなくなった。このことは、信託関係の解釈において、特定の信託法理論のみに依拠することのない柔軟な解決が可能となる反面、常に複数の信託法理論の適用可能性を解釈において考慮する必要があることを意味しており、解釈が複雑となることが避けられない。従って、知財信託においても、特定の信託法理論が特に適合することはなく、個々の信託関係の目的に応じた柔軟な解釈を、複数の信託法理論の適用を念頭に置いて行う必要があることが、明らかになったということができる。 第2に、国際的な法律関係としての問題点についても、信託関係の基本構造に関する理論構成が、密接に関連することが判明した。すなわち、受益権が「債権」であるか「物権」であるか、信託財産が誰に「所有」され、あるいはされていないかによって、牴触法上の解釈が異なるわけであるが、前述のとおり、信託関係に関する基本構造は、信託目的と信託条項とによって大きく変化しうるものであるため、事態は必ずしも単純でない。 来年度以降は、上記のような観点に基づき、国際的な知財信託における問題構造を具体的に明らかにし、多様な信託法理論に基づいた柔軟な解釈指針を提示することに全力を挙げたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、当初計画において予定していた、国際的な知財信託における問題点の抽出について、一応の成果を挙げることができ、来年度における研究の方向性を確立することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降については、牴触法上の信託の解釈指針に関する問題点を中心に、国際的な知財信託に関する問題の構造を明らかにし、複数の信託法理論を柔軟に適用した解釈指針の提示に全力を挙げる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度と同様、文献資料等による情報収集が必要となるほか、実務専門家ないし紛争当事者からの知見ないし情報の提供を受けるため、相当回数の調査等が必要となり、それらのための費用の支出が見込まれる。
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