研究課題/領域番号 |
23530121
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
星野 豊 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (70312791)
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キーワード | 知財信託 / 信託関係 / 信託法理論 / 国際信託 |
研究概要 |
本年度については、前年度からの研究活動及びその成果を踏まえ、国際的な知財信託関係を理論的に分析した場合、どのように捉えることが合理的であるかを検討すると共に、現実の局面における知財信託がどのような問題を抱え、実務がそれに対してどのように対処しているかを、実務家から任意の協力を得て検討した。 もっとも、後者の検討対象については、学術論文として公表することにいてやや問題となる状況も存在していたため、得られた具体的知見や実務的感覚を、可能な限り抽象化して理論的観点として分析検討に役立てることを試みた。 従って、本年度の研究実績として具体的な成果が挙がったのは、知財信託の基本構造に関する理論的検討に関する部分であるが、学術的研究としては、むしろこの方面における理論的観点を深化させることによって、実務における具体的な問題点を解決するための用に役立たせる方が、望ましいとも考えられる。 本年度段階における理論上の観点としては、まず、信託関係一般における理論的観点としての、債権説、物権説(受益者実質所有権説)、信託財産実質所有権説の示す信託の基本構造との関係で、知財信託がどのような特性を発揮しうるかについて検討を加えた結果、これら三者の分析視点は互いに優劣があり、どれか1つの観点によって全ての知財信託関係を一律に分析できるわけでないこと、また、一般の信託関係と比較した場合における知財信託固有の特徴を考えようとする場合には、無形財産としての債権信託等との連続性を考えるよりも、知的財産が知的活動の成果であることから議論を出発させる方が、より優れた観点を抽出できる可能性があることが明らかになっている。 来年度においては、研究活動の最終年度として、上記に述べた理論的観点の深化をさらに図り、知財信託固有の特徴についても、これまでにない新たな理論的観点を発見できるよう全力を挙げたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終的な目的は、国際的な知財信託に関する理論的実務的観点を提示することにあるところ、現段階においては、国際的な知財信託における最も検討が必要な部分はどこにあるかまでが、ほぼ明らかになっている。 もっとも、その部分とは、「知財が人の知的活動である」という点から知的財産の理論的特徴を考える、という、多くの学者は「解決困難」ないし「将来の課題」として実質的に検討対象としないものであるが、残り1年間に自由な考察を経ることによって、相当程度説得力かつ合理性のある理論的観点を抽出することは十分可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおり、来年度は、研究の最終年度であり、当初目標を達成するための理論的観点を発見するため、ひたすら考えることに中心を置くこととなる。その際、必要に応じて、考察の中途段階における結論を公表することや、新たな観点発見のために追加的に知見を広めることも、鋭意行う所存である。
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次年度の研究費の使用計画 |
収支状況報告書において次年度使用額となっている37,779円については、本年度3月に行った佐賀地方裁判所への調査のための旅費として支出が確定している。
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