研究課題/領域番号 |
23530124
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
高橋 満彦 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (10401796)
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研究分担者 |
田口 洋美 東北芸術工科大学, 芸術学部, 教授 (70405950)
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キーワード | 環境法 / 環境政策 / 狩猟 / 野生動物保護管理 / コモンズ / 入会権 / 鳥獣害 / 土地所有権 |
研究概要 |
24年度の特筆すべき活動は、研究協力者上田剛平らと行った狩猟者アンケートである。東日本を中心に19都県で狩猟免許更新者と、14都県の未更新者(狩猟をやめた者)対象のアンケート調査である。更新者は約22,000件、未更新者は約2,700件の回答を回収した。アンケート項目は、年齢等の属性や狩猟の実態等の基本情報、猟場への権利認識、猟場の土地所有者との関係等の情報に加え、東日本大震災の影響など、多岐にわたる情報を収集した。また、福島県いわき地区で、補足として狩猟者のヒアリング等の現地調査を実施。現在、アンケートは解析中だが、時節柄、震災の影響を優先的に分析している。しかし、狩猟者の権利意識、土地所有権との関係等も25年度には解析をする予定であり、貴重な情報がもたらされることを期待している。 また、24年度は連携研究者緒方賢一と漁業権に関する比較研究を行った。高知県での現地調査では、水産資源保護法によるシラスウナギの特別採捕許可に関する聞き取りを行い、鳥獣保護法における捕獲許可との類似性を見出し、興味深かったが、漁業法令との比較研究が不足していることも自覚した。なお、鳥獣保護法上の捕獲許可に関連して、M.Lewisと高橋で熊胆の流通に関する論文を発表した。 文献調査は、23年度からの法制史的な研究を深度化しているが、英米文献へも視点を広げている。 現地調査に関しては、研究分担者田口と狩猟を廃止したケニアにおける予備調査を行い、農民層を中心とする鳥獣害対策への不満を聴取した。25年度に本調査を行いたい。また、国内においては、富山県での狩猟及び鳥獣害調査を行ったほか、東北地区の伝統的狩猟者の会合「マタギサミット」に高橋、田口、緒方で参加し、狩猟者との意見交換を深めた。 研究成果の発表は別欄にあるほか、25年3月に富山で研究組織の研究会兼合同現地調査と一般向けのセミナーとを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内の現地調査が震災の出後れを若干挽回していないものの、震災を契機に行ったアンケート調査は、19都県行政の多大な協力をいただき、貴重なデータが集積できた。現地調査は貴重であるが、定性的にならざるを得ないところ、アンケート調査から定量的データを得られる点は強みである。 文献調査、海外調査は概ね順調である。成果発表も順調に推移しており、国際誌等への論文執筆、国際及び国内学会での発表、セミナーの開催とバランスよく行っている。また、研究会の開催など、研究組織内の交流も活発であり、今後の研究の基盤となる人間関係が構築されつつある。なお、24年度に研究協力者として迎え、先住民族における狩猟の権利意識と比較研究を行う予定のGuy Charltonは本人都合で来日延期となったが、25年6月に国際コモンズ学会の発表に来日するため、当該分野の議論を行いたい。 以上概ね順調であり、25年度は、狩猟者の権利に関する提言的なまとめが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
25年度はまとめの年度であるが、震災で出遅れた現地調査を遂行しつつ、理論のまとめを行いたい。特にアンケート調査の解析には力を入れる。現地調査は研究者が肌で現状を実感することができる大変貴重なものであるが、アンケート調査の実行により、定量的データが収集できているので、アンケートの分析を通じて、震災等で出遅れた現地調査を補完することとができるからである。 現地調査に関しては、。国内は、東北、信州の狩猟者対象にヒアリングを中心に行う(高橋、田口)。海外は狩猟廃止国ケニアの本調査(高橋と田口)と、先住民族の狩猟権との比較研究のための米国調査(高橋と研究協力者上田)を行う 文献調査は理論整理に向けて収斂するように進めるものとし、理論整理と構築には、新たに連携研究者に神山智美(九州国際大)を迎えて、山林土地所有権と狩猟者の関係の議論を深める。 これらの活動を通じて、本研究課題の結論となる理論仮説を構築し、本課題終了後の次のステップの研究へとつなげたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備物品費 書籍150千円、その他(アンケート分析ソフト等)100千円 小計 250千円 旅費 国内 150千円、海外(ケニア、米国)430千円 小計 580千円 謝金 30千円 その他 印刷費(成果物) 40千円 総計 900千円 なお、旅費等の使用に当たって、他の資金との併用も行うなど、効率的に研究課題を遂行するつもりである。
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