本研究は、知的財産法を競争政策との関連で分析・検討することにより、「市場の展開を促し、国民生活を豊かにする」という知的財産法の基本的なシステムあるいはメカニズムを、適切かつ効果的に機能させることを目指し、4年計画で実施するものであり、本年度はその最終年度に当たる。「研究実施計画」に従い、本年度も関連する資料を収集するとともに、その整理・分析・検討を行った。また、研究会やシンポジウム(関西経済法研究会(主催:公取委近畿事務所)や知的財産法判例研究会(主催:比較法研究センター)など)にも積極的に参加し、他の専門家との意見交換を行った。 本年度は具体的成果として「音楽著作権の管理事業と競争政策――JASRAC私的独占を契機として」L&T65号23頁(2014年)を公表した。本研究では、①知的財産権のライセンス、②知的財産の流通、③権利濫用理論と競争政策の関係、という3つの柱を設けていたが、本稿は②の問題に関するものである。具体的には、JASRAC事件審決取消訴訟(東京高判平成25年11月1日)によって浮き彫りとなったわが国の音楽著作権の管理事業に対する規律について、これまでの歴史的経緯と今後のあり方を、特に競争政策の観点から論じている。まず、仲介業務法の成立とJASRACの誕生とそれに続く著作権等管理事業法の成立に焦点を当て、その内容と意義について紹介し、分析・検討を行った。その後、管理事業法と独占禁止法との関係について論じ、さらには、本問題について参考となる事例として、米国におけるASCAPに対する第二次修正終局判決(2001年6月)を取り上げ、問題解決のポイントや方向性について明らかにした。 また、本研究テーマの現段階での到達点として、「知的財産権の行使と米反トラスト法」(野村豊弘先生古稀記念論集『コンピュータと法・知的財産』(商事法務・近刊))を執筆した。
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