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2012 年度 実施状況報告書

診療情報の保護と有効活用-電子健康保険証とレセプトデータベースの導入を射程として

研究課題

研究課題/領域番号 23530126
研究機関日本赤十字九州国際看護大学

研究代表者

増成 直美  日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (80538843)

キーワード個人情報保護 / 疫学研究 / 医事法 / 社会医学 / 医療・福祉
研究概要

本研究課題の2年目においては、事実上、あらゆる診療情報のレコード・リンケージが可能なデンマークの実情および法システムを調査研究した。とくに、医療領域での診療情報の活用、それに関する患者および国民の理解の状況等に注目した。現地調査は、2013年2月10日から同年2月22日に行った。デンマークにおいては、個人データ処理法、国家統計法等の法律の整備により、たとえば糖尿病患者や高血圧患者の診療情報と整形外科領域にある骨粗鬆症に関するデータとのレコード・リンケージが可能であり、多くの学術論文が他の国々より早期に公表されており、疫学研究においては恵まれた環境を獲得している。デンマークでは、個人情報保護法制の歴史も長く、データ保護庁といった個人情報保護機関も充実している。そして、何よりも国民の行政に対する信頼があついといわれる。
デンマークデータ保護庁に対しては、個人情報保護のためになされている方策を中心に聴き取り調査を行った。また、疫学研究者には、研究環境、とくに疫学研究における恵まれた研究環境に対する感想、および今後の課題等についての聴き取り調査を行った。オーフス大学のミヒャエル・ベート教授、ジョン・オールセン教授、シャルロット・デルマー教授、およびデンマークデータ保護庁のマーティン・ナイビ・ピーターセン部長には、多くのご配慮を賜り大変お世話になったことを特記して、感謝の意を表したい。
帰国後、日本とデンマークとの社会システムの違い等を考慮しながら、わが国における診療情報の電子化に対する意見をまとめ、平成24年度の研究成果として、第14回日本医療情報学会看護学術大会で「診療情報の保護と有効活用━レジスタベース研究を素材として」と題して発表する予定である(平成25年7月12-13日、札幌)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

電子医療記録システムからの患者データの2次利用は、臨床研究のために莫大な利益を提供する。しかし、これらのデータを活用しながら、患者のプライバシーを保護するための措置には、多くの課題がある。
デンマーク個人データの処理に関する法律(2000年5月31日の法第429号)は、データ保護の詳細な規定を用意している。本法は、個人情報を含むデジタル化されたレジスタの設立と使用が、個々の市民の法律上の権利を侵害しないような方法で行われていることを確認する。他方で、データ処理が専ら統計学的もしくは科学的研究のために行われるときは、データ主体の同意がなくてもそのセンシティブな個人データを処理することができる、と規定する(10条)。
デンマーク国家統計局に関する法律(2000年6月22日の法第599号)は、統計目的のために行政情報資源を使用することを許可する重要な法的基盤を提供する。本法は、統計目的のためにデータを再収集するのではなく、既存の行政情報資源を活用することこそが理にかなっていることを強調する。すべてのデータは、経済的に効率的であり、回答者の負担を最小にし、コストを削減する方法で収集されるべきであるとの方針である。
デンマーク統計局は、経済・商務省の下にある行政組織であるが、独立して統計を掌る中央機関である(1条)。統計局には、すべての行政レジスタへの完全なアクセス権が保証されており(6条)、一定の要件を満たす研究者には、レジスタベースの研究を促進するために、統計局自らがレジスタから編集したオーダーメイドのデータセットへのアクセス権を提供する。
統計目的のためにレジスタの情報資源を利用することの前提は、それに関する国民の幅広い支持を得ることであり、デンマーク国民はデンマーク統計局に強い信頼を持っている。以上のように、デンマークの状況を把握できた。

今後の研究の推進方策

本研究課題の3年目においては、巨大な診療情報のデータベースを構築、運営しているアメリカ合衆国の状況を調査する。まず、日本国内において、資料収集を行い、現地調査の準備を整える。アメリカ合衆国では、巨大データベースの管理者に対して、個人情報保護のためになされている方策、運営状況、運営上の問題点を中心に聴き取り調査を行う。また、疫学研究者にも、研究環境、今後の課題等についての聴き取り調査を予定している。さらに、臨床医、一般市民、できれば患者にも聴き取り調査を行いたい。現在、アメリカ合衆国の関連機関と調整中である。
帰国後、日本とアメリカ合衆国との社会システムの違い等を考慮しながら、わが国における診療情報の電子化に対する考えをまとめ、平成25年度の研究成果として関連学会で発表するとともに、報告書を本学紀要に投稿する。
また、3年間の研究成果のまとめとして、患者の自己情報コントロール権に深い配慮をしながらも診療情報の電子化を図ろうとするドイツ、事実上あらゆる診療情報のリンケージを可能としてレジスタベースに基づく疫学研究を推進するデンマーク、実際に巨大なレセプトデータベース等を運用するアメリカ合衆国について、それぞれの国における成果と問題点を再確認する。マイナンバー制度の導入が目前となったわが国における示唆を探ることを目標に、報告会を開催する。また、学生や地域住民の方々を含めた討論会も開催予定である。医療における患者の診療情報の保護とその有効活用システムに関して、国民レベルでの議論を展開できる契機を提供できるように努めたい。

次年度の研究費の使用計画

当初の計画通り、アメリカ合衆国に関するデータ保護、疫学研究に関する図書、資料等に40万円、アメリカ合衆国での現地調査(10日)では、交通費=298,000円、宿泊費=22,500円x 8日=180,000円、日当=7,200円x 9日=64,800円で計算し、計542,800円を予算計上した。国内での調査、研究発表等に9万円、謝金、通信費、その他で7万円を予定している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 診療情報の保護と有効活用━電子健康保険証の導入を射程として2012

    • 著者名/発表者名
      増成直美
    • 雑誌名

      日本赤十字九州国際看護大学紀要

      巻: 11号 ページ: 59-68

    • 査読あり
  • [学会発表] 診療情報の保護と有効活用━レジスタベース研究を素材として2013

    • 著者名/発表者名
      増成直美
    • 学会等名
      第14回日本医療情報学会看護学術大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2013-07-12

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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