研究課題/領域番号 |
23530133
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
諏訪野 大 近畿大学, 法学部, 教授 (60368280)
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キーワード | テレビ番組フォーマット権 / 知的財産 / 放送 / 契約 / 不法行為 |
研究概要 |
昨年度の研究実施状況報告書において、今後の推進方策として、①欧州への出張を通して、世界的な最新動向を調査し、結果を法的考察につなげること、②わが国におけるテレビ番組フォーマット権の取引き状況を把握するために、民放連等にアプローチをすること、③平成23年12月8日最高裁判所判決(北朝鮮著作物事件)が、テレビ番組フォーマット権の保護を考えるにあたって、どのような影響を持ちうるのか考察を加えることを挙げた。 ①については、MIPへの参加を通じて、テレビ番組フォーマット権の英国における保護に関する資料を入手することができた。コモンロー国である英国での議論は、そのまま、わが国において通用するわけではなく、比較法的考察を進めている。また、英国ロンドンおよびグラスゴーにおいて、大学の知的財産法研究者との討議や関連資料の収集をおこなった。 ②については、MIPに参加していた各局のテレビ番組フォーマット担当者とリレーションを構築することができ、法的な問題はもちろんのこと、ビジネス面全体として彼らが有している課題や方向性など、現場における最先端の情報交換を継続して行えるようになった。 ③については、北朝鮮著作物事件最高裁判決が出た後に、民法709条を根拠条文として、パブリシティ権を真正面から認めた平成24年2月2日最高裁判決(ピンク・レディー事件)がさらに現れたため、テレビ番組フォーマット権への民法709条適用の可否を論ずる前提として、両者ならびにその他の判決との関係について検討した。その成果は、日本知財学会第10回年次学術研究発表会において、「明文規定のない知的財産と不法行為―パブリシティ権に関するピンク・レディー事件最高裁判決を契機にして―」というタイトルで学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、直接的な法的保護を受けていないにもかかわらず、欧米を中心に、そしてわが国も参加して巨大マーケットを形成している“テレビ番組フォーマット権”が財産的価値を有するということは明らかであるが、現行の知的財産法体系に含まれず、わが国の法体系におけるその位置づけをどのように考えるべきか明らかにすることにある。 わが国においては、まったくと言っていいほど、テレビ番組フォーマットに関する情報がなく、諸外国にそれを求めなければならない状況にあり、研究実施計画においても、まずは現在の状況を把握することが第一であるとしていた。 欧州への出張、とくに、テレビ番組フォーマット売買における世界の中心であるMIPに継続的に参加することにより、その取引きの実情を把握することができ、また、そこに世界中から集まるテレビ番組フォーマット関係者とのリレーションの構築も確実に進んでおり、日本では入手が難しい情報にもアクセスすることが可能になってきている。 5年計画の2年目を終えた現在、当初、ほとんど情報がない状態から、こちらの求める資料や情報を入手できる環境が整ってきており、本研究の目的であるわが国におけるテレビ番組フォーマット権の位置づけという法的考察をするための材料が揃ってきた。 細かな点はともかくとしても、全体的には、研究実施計画に沿った形で順調に進展しているということが言えると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
徐々に、こちらの求める資料や情報を入手できる環境が整いつつあるが、今後も積極的にそれらの収集を行っていく。 具体的には、まず、MIPへの継続的な参加である。MIPに参加し始めて2年であるが、そのような長期とは言えない期間であっても、非常に速いスピードでビジネスが進んでいる。MIPにおいて、わが国の各テレビ局が合同してプレゼンテーションを行い、また、そのバックアップを官庁が行うなど、テレビ番組フォーマットへの関心が高まっている。法的な保護が曖昧であっても、ビジネス先行で状況が進展しており、取引きの実情の把握は欠かせない。 次に、昨年度に果たせなかったThe Format Recognition and Protection Association(FRAPA)への加入である。テレビ番組フォーマットの保護を目的とした世界的な団体であるFRAPAへの加入は、より多くの情報を得ることができるのは疑いのないところである。これら以外にも、テレビ番組フォーマットに関する情報を得るための活動を充実させる。 上記のような積極的な情報収集を基にして、法的考察も深めていく。テレビ番組フォーマット関係者とのリレーション構築が確実になってきたことで、その法的保護に関する資料も集まりだしてきたため、それらの整理・分析・検討を行う。現在は、欧州中心であるが、他の地域における資料の入手も目指し、ネットワークを広げていきたい。 その上で、わが国におけるテレビ番組フォーマット権の位置づけについて、方向性を打ち出せるところまで考察を進めることができるようにしたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費が生じた状況は次のとおりである。本研究を進めるに当たって、重要な位置を占めるものの1つがMIPであるが、そのMIPにおいてテレビ番組フォーマットを集中的に取り扱うMIPFormatsが平成25年4月に開催されることになり、平成24年度末時点での残額9万円余りを他に支出するよりも、翌年度以降に請求する研究費と合わせて使用することが本研究の進展には適していると判断したためである。次年度の研究費の使用計画についても、MIPをはじめとした旅費がその中心となる。欧州以外でも、テレビ番組フォーマットに関するマーケットがあることが判明し、予算と時間が許すのであれば、それらにも赴く可能性がある。また、実務ばかりでなく、研究者との議論も必要であり、テレビ番組フォーマットが中心ではなくとも、ALAI等の国際学会へも積極的に参加していく。 つぎに、上記「今後の研究の推進方法」にも記したとおり、FRAPAのメンバー登録のための支出を行う予定である。加えて、FRAPAはテレビ番組フォーマットに関する世界的な統計をまとめたレポートを数年置きに発行しており、本研究には欠かせないものであるため、入手する予定である。 最後に、本研究の目的であるテレビ番組フォーマット権のわが国の法体系における位置づけについて考察を深めるために、不法行為を中心としたわが国の文献の収集も行う予定である。
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