マイノリティの文化・アイデンティティを尊重しながら全体社会への統合をはかる多文化主義の政策は、同化政策と比較して公正かつ効果的な統合の手法として、多くの国において有力な選択肢として認識されるに至った。しかし近年、国際関係の緊張の増大や反移民感情の高まりを背景に、多文化主義に対しては厳しい批判が浴びせられるに至っている。本研究はこの事情をふまえて、多文化主義への重要な批判を整理し、これらの批判への応答の可能性を模索しつつ、擁護可能な多文化主義の理論の構成の可能性を検討した。この作業を経て、複数のアプローチを接合する「複合的アプローチ」として多文化主義を再構成する見通しを得た。
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