研究課題/領域番号 |
23530142
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中田 瑞穂 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70386506)
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研究分担者 |
藤嶋 亮 神奈川大学, 法学部, 非常勤講師 (70554583)
成廣 孝 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (90335571)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 議会研究 / 執行権と議会 / 新興民主諸国 / 法案制定過程 |
研究概要 |
本年度は計画初年度にあたるため、最も重要な課題は、研究に必要な資源の準備であった。各参加者は、文献・資料・データの体系的な目録の作成と収集に努めた。また、スロヴァキアとルーマニアの質的分析に関しては、年度後半に現地調査を実施し、入手困難な文献の購入・複写、文書館の未公開資料の探索、政党関係者へのインタビューなどを実施した。 研究代表者は今年度は、スロヴァキアでの協力研究者が在外研究中で不在であったため、本科研費用による本格的な調査は次年度に先送りしたが、現地調査を行う別の機会を得ることができ、文献探索、政党関係者へのインタヴューを行った。研究分担者の藤嶋はルーマニアの地方を含め、政党関係者に広くインタヴューを実施し、議会における政党の活動及び、半大統領制の下における大統領と政党の関係についての調査を行った。 これらの実地調査に加え、各参加者は、理論動向の検討と、分析枠組の精密化のための検討を行った。 研究代表者の中田は、平成23年度に刊行した著書『農民と労働者の民主主義』の中で、議会内部の政党間関係、決定過程の叙述分析を行うとともに、その型と民主制の型の関係について理論的考察を行った。また、政党政治とジェンダー政策過程を扱った二つの論文で、チェコの具体例について考察した。さらに、近年の議会研究の動向についてサーベイし、「中東欧議会における法案制定過程」として、科研研究会にて報告した。 研究分担者の藤嶋は、半大統領制における大統領と議会の関係の分類について理論的に考察し、ルーマニアについての事例研究をまとめ、科研研究会にて「ルーマニアにおける半大統領制と民主制の型」の報告を行った。研究分担者の成廣孝は、政党システムについての計量的手法を用いた分析を行い、「有権者の中の政党システム:ヨーロッパ四ヶ国の分析」『岡山大学法学会雑誌』第61巻第2号,267-302頁を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、東中欧のチェコとスロヴァキア、南東欧のルーマニアとブルガリアに関し、政策形成過程における政党間関係に焦点をあて、計量的分析と個別事例の過程分析という複数の研究手法を組み合わせて比較研究を行うことを目指している。 そのうち、初年度に目標としていた、政策形成過程における個別事例研究は、文献資料収集と政党へのインタビューを通じておおむね順調に進展している。特にルーマニアの調査では地方も含めた綿密な調査によって、内実に分け入った調査結果を得ることができた。分析枠組みの構築についても、研究会を通じて、メンバー間の認識の深化・共有を図ることができた。 分析枠組みの構築については、先行研究における議会研究の手法の検討を経て、独自枠組みの構築に向かって手がかりをつかむことができた。また、半大統領制のもとでの大統領と議会の関係については、大統領の権限を4種に分け、それぞれを点数化して示すことで、半大統領制分析の画期的な分析枠組みを得ることに成功した。 計量的分析については、入手可能なデータの確認を行い、準備をすすめた。 残された課題としては、本研究のウェブサイトの立ち上げである。文献目録やデータの所在など、研究の進展とともに生み出される中間的成果の公開のため、ウェブサイトを立ち上げることを計画していたが、実現できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
個別事例研究については、ケースの数を増やすことと、西欧地域との比較の架橋のために、新たにドイツの旧東独地域の州議会を対象とする分担者を加える予定である。ドイツの事例を入れることによって、議会の動き方の新興民主地域における特徴をよりはっきりと示すことができるのではないかと考えている。 スロヴァキア、チェコの中欧、ルーマニア、ブルガリアのバルカン諸国についての個別事例の調査は引き続き進める予定である。 個別事例調査の目的は、質的分析であるが、同時に、具体的な計量分析のために、調査するための法案を絞り込むことも目標としている。そのためには、現地調査に加え、現地新聞の分析などインターネットを利用した調査も行う必要があるだろう。この作業を進めたうえで、次の計量分析のためのデータ収集を行う手順を考えている。 研究成果の発表としては、国内では、2013年6月の日本比較政治学会ないし、10月政治学会を予定している。また、2013年8月にボルドーで開かれるECPR、9月初めのAPSAでの報告のための英文ペイパーを執筆する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度も、引き続き研究資源の準備を継続し、各人は文献・資料の収集を行う。またチェコ、スロヴァキアとブルガリアに関しては、現地調査を実施し、文献資料の探索やインタビューなどを行う。ケースの数を増やすことと、西欧地域との比較の架橋のために、新たにドイツを専門とする分担者を加え、ドイツの旧東独地域の州議会の調査を担当してもらう予定である。 これを踏まえて,本年度の研究会(2回実施)では,各回各自が調査結果に関しての予備的な検討結果を報告し、全体の枠組の修正と、研究の完成に向けた意見交換を行う。 成果の公開に関しては、今年度は参加者各自が本研究に関する論文を執筆し、学術雑誌への投稿を行う。また翌年度の報告のため、アメリカ政治学会(APSA)およびヨーロッパ政治研究コンソーシアム(ECPR)の研究大会での報告を応募する。 また、文献目録やデータの所在など、研究の進展とともに生み出される中間的成果の公開のため、ウェブサイトを立ち上げる。
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