研究課題/領域番号 |
23530142
|
研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
中田 瑞穂 明治学院大学, 国際学部, 教授 (70386506)
|
研究分担者 |
藤嶋 亮 神奈川大学, 法学部, その他 (70554583)
成廣 孝 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (90335571)
網谷 龍介 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (40251433)
|
キーワード | 議会研究 / 執行権と議会 / 新興民主諸国 / 法案制定過程 |
研究概要 |
本年度は本研究計画の二年目にあたり、初年度から引き続き行っている作業として、各参加者は、文献・資料・データの体系的な目録の作成と収集に努めた。また、チェコとルーマニアの質的分析に関しては、現地調査を実施し、入手困難な文献の購入・複写、文書館の未公開資料の探索、政党関係者へのインタビューなどを実施した。 中田はチェコを中心に、藤嶋はルーマニアを中心に、現地調査を行い、文献探索、政党関係者へのインタヴューを行った。網谷は、地方レヴェルの政党システムと議会の関係について主に文献調査を実施した。成廣は、東・中欧地域の選挙、政党、議会関係のデータを収集した。 これらの実地調査に加え、各参加者は、理論動向の検討と、分析枠組の精密化のための検討を行うと共に、ケースをもちいた論文を執筆した。中田は、戦後東西ヨーロッパを俯瞰する、政党間関係と社会の変容についての理論的論文を執筆し、東・中欧の政党間関係と、議会の在り方をその中で位置づける作業を行った。本論文は、論文集の序章として刊行の予定である。チェコをケースとした論文「政党のリンケージ戦略と政党間競合パターン―チェコ共和国を事例に」(『名古屋大学法政論集』第246号、2012年9月、pp.59-106.)も公刊した。藤嶋は、単著『国王カロル対大天使ミカエル軍団-ルーマニアの政治宗教と政治暴力』(彩流社,2012年8月,367頁+78頁.)の中で、執行権と議会の関係について、歴史的ケースを用いて理論的な分析を行った。また、半大統領制という制度的要因に影響について、ルーマニアのケースを用いて理論的分析を行う研究を比較政治学会と、ロシア・東欧学会で報告し、論文「「プレイヤーとしての大統領」トライアン・バセスク-比較の視座から見たルーマニアの半大統領制-」(『ロシア・東欧研究』第41号,2013年3月,1-16頁)を執筆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、東中欧のチェコとスロヴァキア、旧東ドイツ、南東欧のルーマニアとブルガリア、に関し、政策形成過程における政党間関係に焦点をあて、計量的分析と個別事例の過程分析という複数の研究手法を組み合わせて比較研究を行うことを目指している。 そのうち、初年度に目標としていた、政策形成過程における個別事例研究は、文献資料収集と政党へのインタビューを通じておおむね順調に進展している。ルーマニア、チェコ、スロヴァキアでは、内実に分け入った調査結果を得ることができた。今年度から開始した旧東独の調査については、文献を中心に調査が進んでいる。また、議会、政党に関わるデータの収集もチェコ、スロヴァキア、ルーマニア、ブルガリアの4カ国について進めることができた。但し、ブルガリアについての現地調査が課題として残された。 分析枠組みの構築については、先行研究における議会研究の手法の検討を経て、独自枠組みの構築に向かって手がかりをつかむことができた。まず、半大統領制のもとでの大統領と議会の関係については、大統領の権限を4種に分け、それぞれを点数化して示すことで、半大統領制分析の画期的な分析枠組みを得、それを応用して、ルーマニアの執行権、議会関係を分析する報告を、比較政治学会及びロシア・東欧史学会で行い、そこでのフィードバックを反映し、論文をまとめることができた。また、戦後東西ヨーロッパを俯瞰する、政党間関係と社会の変容についての理論的考察を進めた結果、東・中欧の政党間関係と、議会の在り方をその中で位置づける作業ができた。 残された課題としては、本研究のウェブサイトの立ち上げである。文献目録やデータの所在など、研究の進展とともに生み出される中間的成果の公開のため、ウェブサイトを立ち上げることを計画していたが、研究代表者の所属機関の異動があり、実現できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度であり、前2年の調査検討を踏まえ、論文を執筆し公開することが本年度の目標である。 まず、引き続き、各メンバーは、文献、資料、データの収集を行う。また、スロヴァキアとブルガリアについて、現地調査を行い、文献資料の探索やインタビューなどを行う。 これらの文献、資料、データから導かれる理論的考察を深めるため、年度前半に1回、後半に1回研究会を開き、各人の研究についての相互検討を行い、分析枠組みの強化に努める。 文献目録やデータの所在など、研究の進展とともに生み出される中間的成果の公開のため、ウェブサイトを立ち上げる。 研究成果報告としては、6月の日本比較政治学会で採択されたパネルにて、報告を行う。個々のメンバーは、日本政治学会、日本国際政治学会、日本選挙学会でも報告を行い、研究成果の報告に務める。9月にボルドーで開かれるヨーロッパ政治研究コンソーシアムECPRでの報告のために英文ペイパーも執筆する。これらはウェブサイトで公開する。これを踏まえ、年度後半には、論文を完成させ、英文学会誌への投稿を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究費は、①資料、文献、データの国内での収集、②海外調査のための旅費、③研究会開催のための国内旅費、④研究成果報告のための学会旅費の4用途に使用する計画である。 ①については、前二年度に収集できなかった新しい資料、文献、新たに公開された有料データの収集に充てる。 ②海外調査としては、ブルガリアとスロヴァキアを予定している。スロヴァキアについては、ECPRでの学会報告と同時期に行い、費用の節約に務める。 ③研究会のための国内旅費は、研究分担者が、岡山、京都、東京に分散しているため、東京で開く研究会のために利用する。メンバーでカバーしている国以外についての専門知識の提供のために、メンバー外の研究者を招いての研究会も予定している。 ④今年度は、メンバーで多数の学会報告を予定している。国内各地の学会、および、フランスのボルドーで開かれるECPRでの報告のための旅費も使用計画に含まれる。研究会を学会に合わせて開催し、旅費を節約することも検討中である。
|