研究課題/領域番号 |
23530143
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中溝 和弥 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 客員准教授 (90596793)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 暴力 / 民主主義 / インド:ドイツ / 宗教暴動 / 経済成長 / ビハール州 / グジャラート州 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
今年度の研究実績は、次の三つの柱から構成される。第一が研究対象とする州の研究、第二が学会など研究活動の組織、最後に研究成果の発表である。 第一については、今年度はビハール州とグジャラート州に重点を置いて研究を行った。両州共に大規模な宗教暴動を経験しているにもかかわらず、グジャラート州は経済的先進州、ビハール州は最貧困州というように経済規模には大きな差異が存在し、経済成長と暴力の関係を考える上で興味深いと考えたためである。 第二については、主に二つの研究会を組織した。最初に人間文化研究機構「現代インド地域研究」プロジェクトと共催で、"Development, Environment and Socio-political Transformation in South Asia: Diversity and Sustainable Humanosphere in Contemporary Dynamism"と題する国際ワークショップを開催した。暴力と民主主義の関係を考える上で重要なインド人民党研究で知られるスブラタ・ミトラ教授(Prof.Subrata Mitra、ドイツ・ハイデルベルグ大学)を招聘し、インド人民党の分析を行った。次に、アジア政経学会全国大会において「インドの民主主義-制度と実体-」と題する分科会を責任者として企画し、テロ、自治運動、少数派を巡る民主主義と暴力の関係について考察した。筆者自身は「少数派と暴力」と題する発表を行い、インドにおいて少数派であるムスリムが襲撃される政治過程について検証した。 最後の研究成果の発表については、まず著書『インド 暴力と民主主義』を上梓し、ビハール州の事例に基づいて暴力と民主主義の関係を独立以前から遡って分析した。次に、論文「暴動と経済」においてビハール州とグジャラート州の比較を行い、経済成長と宗教暴動の関係を検証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究対象とするビハール州、グジャラート州、アーンドラ・プラデーシュ州のうちビハール州とグジャラート州を取り上げ、宗教暴動の展開に及ぼす経済的要因の影響を考察した。その結果、宗教暴動の発生と克服に民主制が大きな役割を果たしていることが判明し、本研究が手法として掲げる比較分析によって、一定の経験則を導くことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、グジャラート州で州議会選挙が行われるため、平成23年度に引き続き研究を進めていきたい。グジャラート州の他にはアーンドラ・プラデーシュ州のナクサライト運動についても研究を進めることとしたい。ビハール州についても格差と暴力の関係を中心に取り上げながら、民主制の機能を検証していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、平成23年度に引き続き、図書・資料を購入するほか、国際ワークショップを共催し、海外の研究者を招聘することとしたい。人間文化研究機構「現代インド地域研究」プロジェクトと共催する国際ワークショップにおいて(2012年6月29日~7月1日)、カンチャン・チャンドラ教授(Prof.Kanchan Chandra、アメリカ・ニューヨーク大学)を招聘し、インド民主主義と暴力の関係について考察する予定である。
|