研究課題/領域番号 |
23530143
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中溝 和弥 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 客員准教授 (90596793)
|
キーワード | 暴力 / 民主主義 / 宗教暴動 / ナクサライト / 少数派 / ムスリム |
研究概要 |
今年度の研究実績は、次の三つの柱から構成される。第一が研究対象とする州の調査・研究、第二が学会など研究活動の組織、最後に研究成果の発表である。 第一については、今年度はアーンドラ・プラデーシュ州とグジャラート州に重点を置いて研究を行った。ナクサライト運動の拠点であるアーンドラ・プラデーシュ州では、2004年に行われた州政府とナクサライトの和平交渉後の展開について調査・研究を行った。グジャラート州については、2002年暴動に焦点を当てて調査・研究を行った。 第二については、人間文化研究機構「現代インド地域研究」プロジェクトと共催で、国際会議“Discussing Contemporary India”を開催し、“Minority Question in India―The Case of Gujarat”と題する発表を行った。同会議には暴力と民主主義の関係を考える上で重要なアイデンティティの政治の研究で知られるカンチャン・チャンドラ教授(アメリカ・ニューヨーク大学)を招聘し、議論を行った。 最後の研究成果については、先の国際会議における発表の他に、二つの国際会議においてペーパーを提出した。まず“Peripheries Creating the ‘Indian’ Nation”においてナショナリズムと少数派としてのムスリムの関係について論じ、“The Inclusion and Exclusion of Minorities in India”においては、少数派を保護する制度的枠組みの可能性について論じた。論文としては、「弱者と民主主義―インド民主主義60年の実践―」において、弱者としてのムスリムが、民主制を活用して暴力を克服しようとする試みの過程を分析した。“Political Change in the Bihar”においては、政治的変化と暴力の関係について考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究対象とするビハール州、グジャラート州、アーンドラ・プラデーシュ州のうちグジャラート州とアーンドラ・プラデーシュ州に焦点を当てた。 グジャラート州については、2002年暴動の調査・研究を昨年度に引き続き進めると同時に、3回の国際会議でペーパーを提出し、発表した。日本語においても、日本比較政治学会年報に、少数派としてのムスリムの問題を発表した。いずれも、民主主義の制度を活用して暴力の克服を試みる市民の活動を中心に分析を行った。 アーンドラ・プラデーシュ州については、2004年和平交渉後の現状について調査・研究を行い、ナクサライト運動の展開と民主政治の関わりのダイナミズムについて明らかにした。平成25年度には、アーンドラ・プラデーシュ州の事例に基づいた研究を論文として執筆する予定である。 ビハール州については、英語で出版された論文集に、政治変動と暴力の関係に関する論文を寄稿し公刊した。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成25年度は、とりまとめの年となる。これまで調査を行ってきた三州を比較し、民主主義が暴力を克服する条件について検討を行いたい。三州のいずれでも現地調査を展開することを考えているが、重点となるのはアーンドラ・プラデーシュ州とグジャラート州である。現地調査に加え、比較分析の枠組みを鍛えるため、文献調査も同時に行っていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、平成24年度に引き続き図書・資料を購入するほか、国際会議を共催し、海外の研究者を招聘することとしたい。人間文化研究機構「現代インド地域研究」プロジェクトと国際会議を共催する予定である(2013年12月13日~14日)。同時に、対象州において現地調査も展開することとしたい。
|