研究課題/領域番号 |
23530144
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 亘 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40299061)
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キーワード | 大都市制度 / 政令指定都市 / 主成分分析 / メトロポール / ポール・メトロポリタン |
研究概要 |
(1)昨年度後半より引き続き、日本の20政令指定都市について統計的手法で特徴を明らかにする作業を試みた。統計的分析の結果、国家として財源と権限を特別に付与すべき大都市の特徴を明らかにすることができた。これらのことはすでに研究成果として発表する機会を得た。 (2)政令指定都市制度の形成過程、組織的特徴を文献調査によって明らかにする一方で、市長や職員、議員たちの実態調査を行った。総務省関係者、政令指定都市の市長および職員、そして市議会議員へのインタヴューも行い、理論的な仮説を検証することができた。 (3)中央政府の政策決定者たちがどのように大都市制度を含む地方自治制度を設計しようとしているのかということを設計時点の与野党関係者などに調査を行い、彼らが直面している政治的制約についての検討も行った。この点も研究成果を発表する機会を得た。 (4)英国に続き、日本と同じ単一主権国家のフランスの大都市制度の調査訪問を行った。政府関係者の配慮でインタヴューと実地調査を行い、2010年に導入されたメトロポールとポール・メトロポリタン (大都市拠点圏)というふたつの大都市制度が想定外の結末となっていることを知ることができた。メトロポール制度の対象と半ば公然と考えられていたリヨンが移行を断念してポール・メトロポリタンへ移行し、想定外のニースが移行を達成してしまった。ボルドーも消極的な姿勢を崩していないという。このことは日本でも十分に知られておらず、大都市をどのように統治するのかということを考える際に大きな参考となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度と同様、夏期休暇のあたりまで海外調査渡航の予算の執行が危ぶまれたこともあり、その他のデータ分析を含めて秋学期の終わりまでずれ込んでしまったためが、政令指定都市全体の文献調査やインタヴュー調査を実施することができ、また、20政令市の主成分分析の成果をもとに中核市にまで拡大した統計分析の試行なども行うことができた。 以後、研究の継続とともに、単著の発刊など成果を順次、論文などの形で成果を発表していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
20政令指定都市の分析について現段階での成果を中央公論新社より単著として出版予定である。また、政令指定都市に匹敵する人口規模を擁する中核市も分析に加えて統計的分析を行う。順次、研究成果を発表していきたいと考えている。 さらに前年度の調査で明らかになったフランスでの大都市制度について実態を調査し、日本との比較に備えたいと考えている。前述のように、日程が許す限り、新たな大都市制度に対するリヨン、ニース、ボルドーの対応の差を説明するための現地調査を行いたいと考えている。さらに、できれば、日本のみならず英国での研究発表の場をもつべく、英国の研究者と意見交換を行っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度にからさらに拡大した形で統計分析を行うため、統計分析のためのソフトウェアの購入を予定している。また、出張あるいは学会報告用のコンピュータなどの購入などを進めて一層の研究体制の充実と成果発表の効率化を目指す予定である。 また、前年度に引き続いて、研究会や学会に積極的に出席することを通じて専門家あるいは実務家からの意見を得ることや、海外および国内の特定の都市部をめぐる大都市、広域自治体、中央政府との関係を調査するための出張も予定されている。文献による理論的検討については引き続き予定されており、文献の購入も不可欠となっている。
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