本研究は、先進民主主義国で「大都市のディレンマ」をどのように解消する制度的な仕組みが導入されているのかを探究するのが課題であった。つまり、大都市だけに極端に自律性を与えると大都市だけ経済発展し、周辺残部との格差が広がり、社会的には安定しない。他方、地域間の格差を是正すべく大都市の経済的果実を過度に取り上げると、大都市自体が発展しなくなってしまう。この問題が顕在化している英国イングランド、フランス、そして日本の3つの単一主権国家の大都市制度を明らかにした。 特に、日本については、1947年の特別市規定が府県と旧5大都市との対立の結果、一時的な妥協として1956年に政令指定都市として整備された。高度経済成長の中で、道府県の8割の権能を一般の地方自治体と同様の税収と若干の交付税特例加算などで処理してきたが、経済的余裕がなくなる中で、行き詰まりをみせていく。他方で、人口50万以上の市という以上の移行要件や移行手続きが法定化されていなかったために、政治的な思惑で当初の5市から急膨張し、現在では大都市とはいえないような市を含む20市にまでなってしまった。 政令指定都市制度の現状を理解するべく、政令指定都市を運営する主体を明らかにした。また、現在直面している課題を、社会経済的、税財政的、政策遺産的、区行政的の4つにわけて、どこまでが制度固有の問題なのかを示した。その上で、英国やフランスの大都市制度改革をもとに改革案の両極を示し、現在日本で議論されている都構想や特別自治市構想を位置づけ、改革の際の論点を明らかにすることに成功した。
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