研究課題/領域番号 |
23530146
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
築島 尚 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60275005)
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キーワード | 政治学 / 行政学 / 官僚 / 集団 |
研究概要 |
「研究実施計画」に沿って本年度は、アメリカの行政官僚制における人的ネットワークの形成について、ハーバード大学ケネディースクール、コロンビア大学ロースクールという二つの大学院を訪問し、その附属図書館において資料を収集するとともに、学内人事異動に関して関係者から意見聴取を行った。そして、詳細な資料を入手できたハーバード大学について、連邦政府における政権交代の時期を含む1990年代から2000年代初めにかけて在籍した教員の教育内容と経歴を分析したところ、大学教員は、主として研究職として大学において経歴を重ねる者と、一定の専門性をもちながらも中央・地方政府、シンクタンク、マスコミといった分野の実務家としての職歴をもつ者に大別できるが、両者とも政府、研究機関で広く兼職していることが多く、教員一般の政治・行政への関与が日本よりも深いことが分かった。 他方、学生・受講者に関していえば、大学院には、行政における職に就く前提となる修士号取得のための課程が設けられているのはもちろんのこと、幹部養成のための数週間から数ヶ月間にわたる短期再教育プログラム等が用意されており、行政関係者の参加が想定されている。教員と学生・受講者双方におけるこうした状況を、日本と対比して判断すれば、アメリカにおいては、専門教育が官僚制から外部化され、大学院が、教育の売り手(教員)と買い手(学生・受講者)が集う一つの場として、また教員同士、学生・受講者同士が深く知り合う場として機能し、自らの所属する一つの行政機関という狭い枠組みを越えた幅広い人的ネットワークを提供しているのではないかとの知見を得た。さらにいえば、同国の行政官の異動が所属組織を越えて行われることはよく知られているが、その際にこうした大学院の機能が一助となっているものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨今、官僚その他の個人経歴については、日本、アメリカを問わず厳しい管理状況にあって部外者によるアクセスが難しいなか、ハーバード大学ケネディースクール図書館と粘り強い交渉を続け、受講希望者用に作成されたパンフレットを現地で閲覧・複写することできたのは大きい成果であった。 昨年度の研究結果を論文で発表するのが多少遅れてはいるが、現在執筆中であり、後述のように次年度早々に紀要論文にまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実施計画」にあるように、次年度は、引き続き、官僚制における人的ネットワーク形成の国際比較を行う。ドイツのシュパイヤー行政大学院と連邦アカデミーの研究を行うために現地への渡航を計画している。 また、上記のように、昨年度日本の大学校について研究した成果を含んだ現在執筆中の研究論文を公表するとともに、「研究実施計画」にあるように、本年度得た知見をもとにアメリカの行政官僚制における人的ネットワーク形成について小論を執筆する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の直接経費は、本年度と同様に全額を旅費に充当する予定である。なお、その配賦額は20万円と渡欧するには少ないため、不足分については、勤務先で配付される研究費もしくは私費で補填するつもりである。
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