研究課題/領域番号 |
23530146
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
築島 尚 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60275005)
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キーワード | 政治学 / 行政学 / 官僚 / 大学校 / 専門 / 教育 / ネットワーク |
研究概要 |
本年度は、税務大学校についてその機関紙『税大通信』を入手し、以下の知見を得た。 専門教育を施す研修機関である税務大学校の主な教育対象は、戦前の設立以来、普通科における、高卒程度の学歴を有する国家公務員採用III種(初級)の職員である。しかし、そのカリキュラムの変遷を見ると、職務に直結する税法等の専門科目は、全体として設立当初から減少傾向にあり、1980年には3割にも満たなくなる。すなわち、同大学校は、専門教育をさほど行わない専門研修機関ともいえる。となれば、同大学は、①なぜそのような矛盾を孕む機関となったのか、また、②専門教育以外で何を教育しているのか、さらに、③税務行政に必要な教育はどのように行われているのかとの疑問が生じる。 その回答として、①設立当初は、専門科目が8割近くあったが、戦時期や戦後激動期でも税の賦課徴収は滞りを許されない状況にあり、そのなかで専門科目の授業時間が限定されたカリキュラムが定着した。また、当初は、自らを一般の大学生に擬するほどの人材を集められていたが、特に1960年代の大学進学率が上昇して人材の募集が困難になるにつれて、基礎的な教育がより必要とされるようになった。となれば、②そうしたリクルート環境の変化を受けて、基礎学力を重視して「人間形成」に力点を置く授業時間を増やしたために相対的に専門科目の割合が減っていったのであろう。また、伝統的に全寮制の教育体制を採ることで、研修生に共通の経験が得られ、税務官庁全体の一体性を保つことができた。ただし、時代とともに、上司・部下の関係、先輩・後輩関係でも軍隊並の規律に緩みが見られようになった。さらに、③同大学校修了後に最初の配属先で調査・徴収等の専門分野が決められる慣行があり、そうした狭い分野の範囲内で職場において、先輩・後輩の上下関係によって、深い技術・知識の伝承がなされているものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記9.のように税務大学校についての歴史的な考察を深められたものの、研究計画にあるドイツの公務員研修機関については、申請当時に最低限の予算しか計上していなっかたこともあり、ユーロ高騰のため、渡航して調査することが叶わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度への補助事業期間延長をお許しいただいたので、所属機関からの交付金や私費を充てて、同年度中に渡航を果したい。また、税務大学校と自治大学校に関する研究成果をそれぞれ論文にまとめて公表したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、日本の大学校と比較するためにドイツのシュパイヤー行政大学院及び連邦アカデミーを訪れ、資料収集及び関係者への事情聴取を行う予定であった。しかし、申請当初に必要最低限の費用しか予算化せず、実際に交付していただいた同年度の直接経費も20万円と少額であったため、ユーロ高騰の影響が大きく渡航資金が不足し、同年度の研究は日本国内で調達できる資料の収集に留め、渡独を見合わせざるをえなくなった。 このため、次年度は、平成25年度の上記交付額に加えて、所属大学からの研究費を優先して充当するとともに必要に応じて私費も投じて、本研究のための渡独を実現し、資料収集等を行うこととしたい。
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