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2011 年度 実施状況報告書

社会的ジレンマとソーシャル・キャピタルに関する日中比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 23530148
研究機関熊本大学

研究代表者

上野 眞也  熊本大学, 政策創造研究教育センター, 教授 (70333523)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードソーシャルキャピタル / 社会的ジレンマ / 地方自治体 / 中国 / 国際研究者交流
研究概要

本研究は、現代社会における連帯や向社会的行動といった互恵的利他行為を抑制する社会的ジレンマの克服について、日本、中国のコミュニティをフィールドに、ソーシャル・キャピタルの観点から実証的に分析し、人々の紐帯や信頼、互酬性の規範などの行動規範が制度や文化とどう関わっているのかについて明らかにすることを目的としている。実証的な国際比較研究により、共助(共同性)が育まれるための社会的条件について構造的な理解の手がかりをつかむ。この研究により近代社会におけるコミュニティの変容パターンや、文化を活用した向社会性行動を誘導するための公共政策的介入方法について、国を超えた普遍的な知見を得ることを目指す。 日中という儒教文化の基礎的な価値を共有しつつも全く異なる歴史や政治経済環境にある国のソーシャル・キャピタル研究を行うことで、両国のソーシャル・キャピタル構造の特性や普遍性、地域リーダーのネットワーク構造、社会制度と自助・共助の関わりなどについて新たな知見が得られる。またわが国のソーシャル・キャピタル研究で得られてきた知見の国際的普遍性に関して、その有効性や限界を考察することができる。さらに本研究で開発する日中のソーシャル・キャピタル調査方法による分析や解釈から、異文化、異社会制度における埋め込まれたソーシャル・キャピタルをどう扱うべきかについて研究方法の改善を行うことが期待できる。 平成23年度は日本・中国のコミュニティレベルのソーシャル・キャピタルの特性を調べるため、日中両国において実施する2カ国語の住民アンケート調査票の作成やフィールドの選定、行政機関等への協力依頼といった準備作業を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成23 年度は、中国における共同研究者である復旦大学の劉春栄准教授及び大学院生とともに、ソーシャル・キャピタルに関する住民アンケートを実施するため以下の準備を進めた。中国におけるソーシャル・キャピタル研究のレビューを行うとともに、中文の調査票の作成、上海市における調査フィールドの選定、調査フィールドに関する情報収集、街道や鎮などの基礎自治体及び調査対象地区のリーダーとの協力関係の構築、調査の許可に関する上海市政府への打診を行った。 調査票は、これまで日本で開発してきたソーシャル・キャピタル測定の調査票を翻訳したものをベースに中国の事情を斟酌して手直しを加えた。また同内容の日本語版調査票を用いて、国内の山村、漁村2カ所の調査フィールドに対してアンケート調査を実施し、従来から整備してきた全国のコミュニティレベルのソーシャル・キャピタル調査データで構築しているデータセットとの整合性について確認を行った。 当初計画した内容はほぼ計画どおりに実施できており、順調に研究は進捗している。日本における当該調査票によるソーシャル・キャピタル調査では問題は発生していないが、中国でのプリテストがまだ未実施であり、次年度の上海市における調査実施前に最終的な調査票の確認作業が残っている。

今後の研究の推進方策

平成24年度は、平成23年度に選定した上海市の調査フィールドに対して、アンケート調査、リーダーへの社会ネットワーク調査を実施する。またそれらの調査フィールドの住民、地域リーダー、基礎自治体職員等へインタビュー調査を行う。量的調査については、データを電子データとして整理し、統計的な解析を行う。また質的調査データについては、テキスト分析などの手法により量的データを解釈するための有用な知見を得る。また、中国において本研究テーマに関する研究フォーラムを共同研究者とともに開催して、研究者の国際交流の場にもしたいと考えている。 平成25年度は、23年度調査した地域に対するフォローアップ調査を行う。また調査・分析の結果をそれぞれの地域にフィードバックして、調査内容の妥当性の検証を行う。最後に3カ年間の研究の成果をまとめ、印刷物として公表するとともに、説明会などにより地元への還元を行う。 これらの実証的な国際比較研究により、共助(共同性)が育まれるための社会的条件について構造的な理解の手がかりをつかむ。この研究により近代社会におけるコミュニティの変容パターンや、文化を活用した向社会性行動を誘導するための公共政策的介入方法について、国を超えた普遍的な知見を得ることを目指す。

次年度の研究費の使用計画

次年度の科学研究費は、上海市において2カ所のコミュニティに対して調査実施、フォーカスグループインタビューの実施、及びデータの分析に必要な旅費、需用費、通信連絡費、調査員の雇用経費、謝金等に使用する計画である。 次年度使用額6,800円は、招聘者が来日の際に悪天候のため航空機が大幅に遅れ旅程途中の都市で宿泊する必要が発生したため、後日旅費の調整を行ったが、その際年度末の時期であり資金計画に齟齬が生じて結果としてこの額が余ってしまった。少額であり、次年度事業費とともに利活用したいと考えている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「ソーシャル・キャピタルのコミュニティ効果」2011

    • 著者名/発表者名
      上野眞也
    • 雑誌名

      熊本大学政策研究

      巻: 2 ページ: 23-32

  • [学会発表] 地域力の測定―ソーシャルキャピタルと社会ネットワーク分析―2011

    • 著者名/発表者名
      上野眞也
    • 学会等名
      九州政治研究者フォーラム
    • 発表場所
      別府市
    • 年月日
      2011年8月28日
  • [学会発表] ソーシャル・キャピタルのコミュニティ効果2011

    • 著者名/発表者名
      上野眞也
    • 学会等名
      日本公共政策学会
    • 発表場所
      北海学園大学
    • 年月日
      2011年6月19日
  • [図書] 上野眞也「コミュニティの持続可能性とは何か?―ソーシャル・キャピタルの視点で」『将来世代学の構想』2012

    • 著者名/発表者名
      高橋隆雄編
    • 総ページ数
      325
    • 出版者
      九州大学出版会

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公開日: 2013-07-10  

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