研究課題/領域番号 |
23530153
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
佐藤 真千子 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (40315859)
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キーワード | フリーダム・ハウス / カーター政権 / 人権報告書 |
研究概要 |
H24年度は、1970年代に展開された米国政府による人権外交とフリーダム・ハウスによる国内外の人権問題に対する取り組みについて、主に以下の検証を進めた。第一に、連邦議会が国務省に課した国別人権報告書は、フリーダム・ハウスによる「世界の自由」という諸外国の自由の関する報告書から着想を得たのみならず、フリーダム・ハウスのとの協力を得て作成されていた。第二に、ヘルシンキ合意(1975年)を契機に展開されたフリーダム・ハウスや他の人権団体(アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチ)による人権擁護活動は、その後、人権団体の活動領域や得意分野による棲み分けが進み、フリーダム・ハウスはサハロフ博士などソ連の反体制派のための直接的支援、諸外国の情報の自由に関する調査に重点を置いた活動を展開していくこととなった。第三に、1961年対外援助法が1970年代に修正され、被援助国の人権状況への配慮が対外援助の必須要件になった過程、カーター政権の人権外交を理解するひとつの鍵としてフリーダム・ハウスの理事(政権登用期間は休職)に就いていたツビグニュー・ブレジンスキー国家安全保障担当大統領補佐官とフリーダム・ハウスのカーター政権期の活動に関する分析を進め、ソ連の自由化問題に関してフリーダム・ハウスとカーター政権の情報共有や連携、見解の相違などを見出すことができた。第四に、1970年代のソーシャル・デモクラッツ、労働組合、フリーダム・ハウスの思想的変化とそれにともなう活動や理事らの変化、さらにレーガン政権期に設立された全国民主主義基金(NED)による民主化支援の関係に関して蒐集した情報について、現在分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の過程で明らかとなった検証結果や新たな問題に鑑み、交付申請時に予定していた2年目の調査実施機関(図書館等)を変更した。フリーダム・ハウス関係者への聞き取り調査を優先的に実施したことにより、資料からは不明瞭であったいくつかの点について解明することができた。とりわけ1970年代以降にフリーダム・ハウスの政策決定に携わった方々への聞き取りから、ベトナム戦争後の米国社会で変化した思想的潮流とフリーダム・ハウスの思想的方向性について考察を進めることが可能となった。このように必要に応じて、当初の計画に微修正を加える対応をとることで研究目的を達成することを目指した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるH25年度は本研究の総括に向けて研究を進めていく。重点課題は80年代から冷戦終焉時の時期における活動の変化と思想に関する検証であり、さらなる一次資料の精査と分析、フリーダム・ハウス関係者への聞き取りを遂行し、研究成果を研究論文としてまとめていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は、突然直面することになった家庭の事情(親の介護と葬儀など)により当初計画していた海外出張を計画通りに遂行することが困難になったため、旅費として計上しておいたが執行できなかった研究費の一部をH25年度に請求することとした。H25年度の研究費は主に海外での調査を遂行するための旅費、研究成果を公表するための印刷や製本等に使用する予定である。
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