研究課題/領域番号 |
23530153
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
佐藤 真千子 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (40315859)
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キーワード | 米国 / 自由 / フリーダム・ハウス |
研究概要 |
1980年代以降にフリーダム・ハウスで活躍した当事者へのインタビューに重点を置いた研究を計画していたが、インタビューよりも前に一次・二次資料の分析に重点をおいて研究を進めた。H25年度の実績として、以下の内容を挙げることができる。 第一に、米国の公民権や市民的不平等の問題の改善のために貢献したバイヤード・ラスティンの活動と思想への接近である。フリーダム・ハウスが国内問題にも取り組んでいた背景には、彼の存在と影響力が存在したと言ってよい。彼はフリーダム・ハウスの活動の一環としてアフリカや中南米での選挙監視をアメリカ人として初めて実施し、それ以来、フリーダム・ハウスは各国のガバナンスや政治的自由を擁護する活動を継続している。第二に、全米労働組合ALF-CIOの会長レーン・カークランドとフリーダム・ハウスの関係である。カークランドはポーランドの連帯など民主化運動の地下活動を積極的に支援してきた。ポーランド支援の成功例はその後南アフリカでの取り組みにも生かされることとなった。フリーダム・ハウスもポーランドの民主化支援に乗り出すが、カークランドの連帯支援はそもそもフリーダム・ハウスとしての活動であったかといえば、むしろAFL-CIOが中心に行っていた活動をフリーダム・ハウスが側面から支援していたようである。第三に、レーガン政権期に設立された全国民主主義基金(NED)の会長カール・ガーシュマンの社会民主義的思想とフリーダム・ハウスの関係についての研究である。ガーシュマンをNED会長候補としてレーガンへ推薦したのはフリーダム・ハウスであった。60年代以降、ガーシュマンは社会民主義的な運動に携わりながらフリーダム・ハウスの人々と協力的関係を維持してきた。 以上のように、H25年度は社会民主的な運動に携わってきた人物とフリーダム・ハウスの関係について、成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はH25年を最終年度として計画を立てていたが、研究の過程で社会民主主義的な活動家に関する文献および資料の精査を優先する必要があった。そのため、当事者への聞き取り調査を行うタイミングは、文献での検証を経た後の方がより良いインタビュー結果を期待できるため、研究費に未使用額が生じ、それを翌年度に実施する聞き取り調査(海外での調査旅費)として使用するべく計画を調整した。そのため、研究期間を1年延ばす結果になったため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるH26年度は本研究の総括を行う。とりわけ1970年代~80年代の時期についてのさらなる検証と、東欧革命とソ連崩壊後の時期およ2001年9.11テロの前と後の時期について、フリーダム・ハウスの活動の変化に注目して検証を進める。引き続き、一次資料の精査と分析およびフリーダム・ハウス関係者への聞き取り調査を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は、レーガン政権以降のフリーダム・ハウスの動向と政策議論について当事者へのインタビュー調査を中心とした研究を進める予定であったが、80年代以降の民主化支援活動に思想的影響を及ぼした社会民主主義的な運動家らに関する分析を優先するべきと判断したため、計画を変更し、現地調査に重点を置くよりも文献についての検証を重視して研究を進めたため、未使用額が生じた。 次年度の使用額は、主に70年代~80年代以降、冷戦後の時期、および2001年9.11テロの前と後の時期について、フリーダム・ハウスとその関連組織の活動に関する関係者への聞き取り調査の旅費として予定している。さらに研究総括と研究成果の出版に向けた準備のための経費に充てることを計画している。
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