平成26年度は、アメリカにてフリーダム・ハウス関係者へのインタビュー調査と米議会図書館での文献調査を行うことができた。当初の研究計画では2001年9.11テロの前後の時期のフリーダム・ハウスの活動の検証も含めていたが、研究調査の過程で、フリーダム・ハウスと特に第一期ブッシュ政権(息子)の関係に関してラムズフェルド国防長官のラムズフェルド・ペーパーの閲覧申請を出していたが、閲覧拒否の回答が届き、同時期の調査に制限が生じた。また資料閲覧を予定していた、国家安全保障担当大統領補佐官としてカーター政権に登用されるまでフリーダム・ハウスの理事であったブレジンスキーのブレジンスキー・ペーパーについても「フリーダム・ハウスとカーター政権の関係を示す資料は含まれていないと思う」との本人の回答により、資料閲覧に制限がかかった。その真偽のほどは閲覧可能になるときに一次資料の検証が必要である。したがって、9.11前後の時期およびカーター政権期については、引き続き、本科研費による研究期間後の将来的な重要課題として研究継続する。 以上のような資料調査上の制限が伴ったものの、インタビュー調査、二次文献及びフリーダム・ハウスの内部資料を活用することにより、次のような知見を深め、研究成果を得ることができた。米政府のベトナム戦争政策を支持してきた団体・知識人は、リベラル派と保守派を両極とする団体内部及び世論の分裂を以前よりも強く問題視し、世論の中間層・穏健派の拡大を重視するようになった。そのためにメディアや報道の自由が彼らの中心的問題関心となり、米国内にとどまらず諸外国の報道の自由への取り組みがスタートした。現在、H26年度の研究考察を論文にまとめる作業と、単著『自由の追求:フリーダム・ハウスの軌跡』としてこれまでの研究成果をひとつにまとめる改訂作業に取り組んでいる。
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