研究課題
この研究の目的は、インドネシアで2008年に始まった村落林(Hutan Desa)制度が、発展途上国の土地と資源をめぐる問題の解決のための共同的資源管理(Community-Based Forest Management) のモデルケースとして、どの程度の有効性があるかを検討することであった。平成23-25年の3年間に、文献調査と計6回のインドネシアの現地調査(東カリマンタン州とジャンビ州)を行った。現地調査では、ジャカルタの林業省で、村落林に関する政策決定担当者に対して、全国の村落林申請と認可状況についての聞き取りを行った。現在村落林に申請中の東カリマンタン州東クタイ県と、すでに村落林の許可を得たジャンビ州ブンゴ郡のルブック・ブリギン村で聞き取りと参与観察を行い両地域の比較を行った。上記調査の結果、政府機関(林業省、州政府、県政府)の「村落林制度」運用において、村落林制度に参加を希望する住民側が村落林制度へ登録を行うにあたってどのような困難があったのかを明らかにした。林業省では、村落林をはじめとする住民参加型森林管理を進める政策は林業省の担当部署だけが進めており、他の部署では現地からの申請が行われている土地に対して企業への森林開発許可を出すなど、縦割り行政が著しい。また、ジャンビ州ではよく組織されたNGOからの働きかけにより地方政府が住民参加型森林管理に好意的な政策をとってきた。一方、東カリマンタン州では地方政府はアブラヤシ農園の拡大を推進し、村落林制度への理解は限定的である。また、東カリマンタン州では、2つの村の住民たちが村落林制度へ登録しようとしたところ、周辺地域の住民との境界線争いが生じている。研究成果は平成24年度3月にトロントで開催されたアジア学会で発表し、これを書き直して英文雑誌Asia Pacific Viewpoint へ投稿し、26年度4月に掲載された。
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Asia Pacific Viewpoint
巻: Volume 55, Issue 1 ページ: 6-23
DOI: 10.1111/apv.12042
北星論集
巻: 53(1) ページ: 45-60