研究課題/領域番号 |
23530163
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
苅田 真司 國學院大學, 法学部, 教授 (30251458)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 政治学 / 社会学 / 思想史 / 社会科学史 |
研究概要 |
本研究の目的であるパウル・ラザスフェルドを中心とするコロンビア大学の初期行動論グループの思想的分析と「行動論」の確立過程の歴史的な理解のために以下のような研究を行った。 まず、ラザスフェルドの思想と方法に関しては、ラザスフェルドの著作およびラザスフェルドを対象として含む先行研究文献を収集し、主に方法論的な側面からその分析を行った。その結果、ヨーロッパ時代のラザスフェルドの思想と社会科学観の重要性が具体的に裏付けられることになった。特に、ウィーン学団との関係は、これまで十分に分析されてこなかったが、ラザスフェルドの実証主義的方法論の形成過程におけるその重要性が明らかになったと考える。 次に、アメリカ時代のラザスフェルドに関しては、その背景となるアメリカにおける1940年代の社会科学論に関する文献の分析を中心に行った。一方で、方法論的な面における論争と対立の中に現れた、アメリ社会科学の行き詰まりの様相を明らかにした。他方、戦時下および戦争直後という状況下において「戦時協力」および社会科学の「政治化」が進行した時期であることを念頭に、こうした社会科学を取り巻く環境が、戦後社会科学における実証主義の受容に関して大きな意味を持っていることを明らかにした。 以上のように、アメリカ時代のラザスフェルドに関して、単なるアメリカ社会科学の延長ではなく、外在的な社会科学の一種の「輸入」としての側面があるという本研究の着想を裏付けるための準備作業が進行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究計画で予定されていた作業のうち、ラザスフェルドの著作およびラザスフェルドを対象として含む先行研究文献を収集し、その分析を行うこと、および、アメリカにおける1940年代の社会科学論に関する文献の収集と分析を行うことについては、ほぼ計画通りに実施された。しかし、当初予定していたアメリカ合衆国でのラザスフェルドに関する文献の収集には着手することができなかった。 その理由は、先行研究の分析が進行するにつれて、アメリカ時代のラザスフェルドとヨーロッパ時代のそれとの密接な関係が明らかになり、ヨーロッパ時代の思想と方法論の解明を十分に行っていない状況で、アメリカ合衆国での資料収集を行っても十分な成果が上げられないと考えられたためである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究を踏まえて、研究計画に基づき、以下のような研究を行う予定である。まず、アメリカにおけるラザスフェルド関係の非公刊資料の収集と分析を行う。次に、ヨーロッパ時代のラザスフェルドに関する、方法論及び社会科学観を、特にウィーン学団的な実証主義との関係を中心に分析する。第三に、アメリカ時代のラザスフェルドに関する、方法論及び社会科学観を、プラグマティズム的な社会科学との異同の問題を中心に分析する。第四に、ラザスフェルドの社会科学観のアメリカでの受容過程を、1940年代を中心に分析する。なお、この年度においては、ラザスフェルドの方法論および社会科学観に関する論文の発表を予定している。。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度着手することができなかったアメリカ合衆国での未交換資料の収集と分析に関しては、今年度の研究の進展によって、ヨーロッパ時代のラザスフェルドの位置づけがある程度明らかになったため、実施するための条件が整ったと考える。そこで、次年度には、この資料収集のための旅費が支出される。 それ以外の研究費に関しては、研究計画に即して文献などの収集に当てられる。特に、1940年代のアメリカ社会科学論に関しては、いまだ十分な分析が行われたとは言いがたいため、引き続きこの分野に関する文献の収集も行われることになる。
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