最終年度のH25は、研究成果の取りまとめ及び成果の公開に努め、研究成果を発表した。研究成果の取りまとめに際しては、東アジアの主要国の日本・中国・韓国・モンゴルの4か国を対象にした共同研究の成果を活用し、行政文化の内容とその特徴が顕著に現れる公務員制度の国際比較を行い、その相違について明らかにした。また、行政文化研究が盛んである中国において日本の行政文化との比較を行い、日本行政の特性についても比較研究の結果について報告を行った。 東アジアの行政文化の学際的な形成については、日本・中国・韓国の研究実績を踏まえ、文化決定論や近代化論から始まった行政文化研究が、1980年代以降、新制度論の影響を受けた文化理論が応用され、1990年代以降の行政文化研究は、新文化理論や競争価値モデルなどが行政のみならず政策論にまで広く応用されている状況について分析を行い論文として発表した。特に、行政の現代化という国際的なトレンドの影響で、行政におけるICT応用が進み、日本同様の行政システム、例えば、人事管理システムや人事評価システム、電子調達などの分野においては、同様の運用原理を持ったシステムが導入・運用されていることから、行政文化への影響も生じていると考えられる一方、ガバナンスという考え方が浸透している点を考慮すれば、行政文化の変容にも同質的な要素が働くと考えられる。 これまでの研究の結果において、行政文化の在り方は、政治システムや行政システムの同質化現象に伴い、益々重要な要素になりつつある一方、その体系的な研究実績は浅く、欧米との比較やアジアとの比較において遅れをとっているのが現状である。今後は、儒教的影響の下で進められている市場主義的・競争主義的な行政改革がマクロ的かつ政策過程への影響について、欧米との比較を交えた国際比較に取り組みたいと考えている。
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