本研究は、戦前日本に存在した軍法務官の実態を明らかにすることを目的としている。本研究は、軍法務官の研究史を押さえ、経験者やその家族の 「肉声」 を手がかりになじみの薄い軍法務官のイメージを把握し、その概念を明確化した。次に軍法務官を法制的に根拠づけていた法律・勅令に従って、 軍法会議における彼らの権能やその終身官としての身分保障、 任用資格、 定員などを明らかにした。 そして、軍法務官を取り巻く環境の変化についても論じ、太平洋戦争開戦後に主張された「統帥の要求」 に即応せよとの声に対し、軍部における司法の独立を象徴していた終身官という特権が廃止され、時代の波に飲み込まれたことを明らかにした。
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