研究課題/領域番号 |
23530169
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
厚見 恵一郎 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (00257239)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | イタリア・ルネサンス / 人文主義 / 君主の鑑論 / アウグスティヌス / ペトラルカ / 統治論 / 徳論 / マキァヴェッリ |
研究概要 |
2011年度はおもに14-16世紀イタリア人文主義における統治進言書にかかわる文献の収集・読解をおこなった。フィレンツェ以外のミラノやナポリといった君主政の伝統を持つ諸都市における入手容易な一次・二次文献が、フィレンツェの「共和主義的」人文主義のそれに比して大変少ないこと、近代的な編纂版が出版されていない重要一次資料も存在することが分かった。これら君主的人文主義関連の資料(ポンターノ、パトリッツィらの著作を含む)収集に力を注いだ結果、日本国内唯一と思われるマイクロフィルム資料や、インターネットの古典籍データベース、海外古書籍店サイトなどへのアクセスを通じて、年度内にさしあたり必要な主要な一次資料の8割程度を収集できたとの感触を持っている。これらをふまえ、現在のところ得られた知見ないし見通しは次のとおりである。1. 古典古代から16世紀北方ルネサンスに至る統治進言書の系譜を、中世のアリストテレス受容、人文主義の影響、マキァヴェッリ『君主論』の登場と伝播といった諸契機を区切りとして、9つほどの段階に分けて時系列的に並べることが可能でありそうなこと。2. イタリア・ルネサンスの統治進言書を、<市民的(共和主義的)人文主義と宮廷的(君主政的)人文主義>という枠組で分類する際、双方におけるキリスト教的徳の改変に注目することが、統治者論の変遷の特徴づけに有効であろうということ。3. 2の際に、キケロ主義やアリストテレス主義・トマス主義の系譜だけでなく、アウグスティヌスの改変と受容の歴史をも考慮に入れたほうが、人文主義におけるキリスト教的徳論と古典古代の徳論との関係が見えやすくなること。4. アウグスティヌス(主義)とストア主義の人文主義的交錯について、中世の統治進言書と15世紀イタリアの統治進言書との間に14世紀のペトラルカを置くと、流れがよりスムーズに把握できそうであるということ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イタリア人文主義統治論にかかわる文献収集と読解に時間がかかっていることなどから、当初予定していた北方ルネサンス人文主義の統治論にかかわる文献収集と読解がやや遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
2011年夏に資料収集のための海外出張を予定していたが、想定していた資料がインターネットのデータベースを通じて入手できたことや、入手済み資料の読解と研究以外の諸業務などに時間を費やしたことなどから、海外出張は実施せず、その分の旅費も発生しなかった。その後、海外図書館のみに草稿のかたちで所蔵されている資料の存在が明らかになったため、2012年度に海外出張を実施し、さらなる資料収集・読解を進めるとともに、論文執筆に向けてのメモや草稿の作成を進める計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記「今後の研究の推進方策」に従って、前年度未使用の旅費を2012年度に使用する予定である。あわせて、前年度より繰り越された物品費を、北方ルネサンス統治論を含めた統治進言書の系譜にかんする研究資料の収集に充てたい。
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