本研究は、ドイツの首都であるベルリンにおいて実施された区合併(2001年)と区民発案・区民投票制度の導入(2006年)の成果や問題点を検証することによって、東京における都区制度改革、政令指定都市における区への権限移譲、地域内分権を中心とした制度改革、大阪府や大阪市が目指している「大阪都構想」などの日本における大都市制度改革をめぐる議論に資することを目的としていた。 そこで、大都市における区レベルにおける住民自治、区民投票制度のあり方や問題点を「行政の効率化」と「住民に身近な区制度の充実」をセットとし、「より少なくすることは、より多くすることである!」をモットーに区合併や行政改革、都市州政府から区役所への権限移譲、区民発議・区民投票制度改革を実施したベルリンの事例に関する研究論文や行政資料の収集、住民運動団体へのヒアリングなどを行うことで、日本の制度との比較も含めた考察を実施した。 本研究に取り組んでいる3年の間に、とくに「大阪都構想」の是非をめぐる議論を受けて、大都市制度改革に関する議論が活発になり、政令指定都市における区制度をめぐる法改正が実施されることとなった。また、東京・大阪・新潟などでの原子力発電所再稼働の是非を問う住民投票条例制定を求める直接請求運動が行われたり、東京都小平市における都道建設問題をめぐる住民投票の実施が全国的に脚光を浴びるなど、市町村合併の動きが収束して以降沈静化していた住民投票が再び注目され、活用されるようになった。現在も全国各地で大型公共施設建設の是非を問う住民投票を求める動きがあり、常設型住民投票条例の制定事例も増加している中、本研究の重要性は高まっているように思う。 2012年度の日本公共政策学会、2013年度の日本政治学会でおもに区民投票制度についての発表を行ったが、今後、さらに本研究の成果をいくつかの論文としてまとめる予定である。
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