本研究は「複線型自治制度における地域産業振興と府県機能に関する実証研究」として、行政学と地方自治・地方財政論の視点から府県の地域産業振興政策に焦点をあて、府県出先機関を含む府県の政策立案・実施・評価過程と財政・予算編成過程の実態を調査・分析した。 平成25年度は、行政学や地方自治論、地方財政論等の学術研究・文献や統計・行政資料などをフォローした 。現地調査と資料収集は、府県本庁や府県出先機関や市町村の地域産業振興政策関係各課、外郭団体、民間企業等に対して8道府県で実施した。北海道(十勝総合振興局、空知総合振興局、池田町)、青森県(中南地域県民局)、秋田県(県庁、平鹿地域振興局、横手市)、新潟県(三条地域振興局、一般財団法人燕三条地場産業振興センター、三条市)、京都府(府庁、山城広域振興局、宇治市)、和歌山県(日高振興局、みなべ町)、大分県(西部振興局、九重町)、熊本県(県南広域本部、芦北地域振興局、水俣・芦北地域雇用創造協議会)等であった。さらに47都道府県の府県出先機関の地域産業振興政策所管部課長に対して、出先機関の行財政機能のあり方と職務意識に関するアンケート調査も実施し、整理・分析した。 府県が効果的・効率的に地域産業振興政策を実施するためには、府県出先機関圏域での地域的分権のあり方と、府県出先機関が果たす政治・行政的機能のあり方が重要な要因となっていることを実証した。府県の個別出先機関と総合型出先機関の両方とも、事業の立案機能や地域ニーズに沿った効果的な事業実施、市町村関係部局や地域団体等との利害調整を現場で担っていると考えられた。関係部局の縦割り行政のあり方を横串に連携や総合化する機能は総合型出先機関の方がよく担っており、出先機関の裁量で使える独自予算や実質的に事業立案し予算化できる事業、決定権限をもつ交付金・補助金に関する権限の存在が関連していると考えられた。
|