研究課題/領域番号 |
23530182
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
潘 亮 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80400612)
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キーワード | 国連外交 / アジア・アフリカ外交 / 国際文化教育組織 |
研究概要 |
平成24年度は本研究の第2ステージに当り、主に二つの側面から研究を進めてきた。 (1)前年度に続き、冷戦期日本外交における多国間主義の形成をめぐる研究は個々の論文の執筆作業に移っている。まず、国連憲章の改正問題に焦点を当て、近年公開された膨大な量の一次資料を平成24年4月から7月にかけて外交史料館を拠点に集中的に調査を実施した。その成果を活かす形で、10月に、「国連憲章改正と日本-静かなる「現状打破」の軌跡 1946年-78年」と題する論文を完成し、『日本の外交第2巻 外交史・戦後編』(波多野澄雄編)の一章として平成25年3月、岩波書店より刊行された。更に、平成24年8月から10月にかけて、同じ外交史料館で国連における日本とアジア・アフリカ諸国との関係について資料調査を行った。その結果に基づいて、平成25年2月に、論文「日本の国連外交におけるアジア・アフリカ 1956年~1978年―「是々非々」の姿勢の光と影―」を完成し、本年秋、『日本政治外交史叢書(仮)』の一章として中央公論新社より刊行される運びとなっている。 (2)本来研究の第3ステージの課題として用意された日本と国際文化教育組織に関する研究は関連の国際共同研究の実施によって平成24年度に繰り上げて実質的な研究準備を始めた。その第一歩として、平成24年9月4日、オーストラリアシドニー大学で開催されたワークショップにおいて"Japan's "Nationalistic Internationalism" and Cooperation with International Cultural Organization"と題する論文を発表し、好評を得た。既に同論文をベースにする英文共著の執筆準備が始まり、平成25年度に完成する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は当初の予定に従い、国内外における研究成果の公開に力を入れ、所期の成果を上げることができた。特に共著執筆の作業は予定よりも順調に進んでおり、2本の論文を改正し、内1本は年度内の出版にこぎつけた。また、第2ステージの一部(デタント期のアジア太平洋地域の秩序構築に関する研究)は既に平成23年度に行ったため、平成24年度においては引き続き各研究課題の進捗状況に応じて調整を行い、平成25年度に予定されていた研究の一部を前倒しに実施した。そのため、25年度における英文論文の執筆作業は予定よりも早く開始することができる見込みとなっている。しかも、当初計画したジャーナルへの投稿ではなく、英文共著の形での執筆が実現され、これで公刊も予定より早くなる可能性が出ている。 他方、海外における資料調査は25年度に変更することになったが、これは予定より作業が遅れたというよりも、単に作業の順序の変更によって生じたことで、目下、25年度に実施するフランス及び台湾における資料調査の準備を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降、主に次の諸点を念頭に入れながら研究作業を進めていこうと考えている。 (1)国連外交に関する史料が大量に公開された現状に鑑み、日本国内における資料調査と収集を引き続き実施する。それと同時に、24年度に執筆した2本の論文を含め、より広い視野から冷戦期日本の多国間外交の形成に関する分析を行い、その成果を単著にまとめる準備を進めていきたい。 (2)日本と国際文化教育組織との協力に関する英文共著論文を完成する。その一環として海外(フランス、台湾など)における資料調査を実施するとともに、論文内容の一部を国際会議において報告する準備も進めたい。 (3)平成23年度に完成されたデタント期アジア太平洋地域の秩序構築に関する共著論文は25年度に公刊される予定であるが、その延長で日米豪英の四カ国を射程に入れるより複眼的な分析を試みたい。そのための資料調査も25年度に実行する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の使用計画に、前年度より1,384,057円の繰越が含まれているが、その大半は24年度において研究成果公開計画の一部(邦文共著の出版)が前倒しに実施しため、本来予定されていた海外(フランス及びイギリスまたは台湾)における資料調査は25年度に変更した結果、生じたものである。更に、本来24年度に予定したパソコンの購入なども、データ処理の便宜性に鑑みて、25年度に延期したことでその分の経費も繰越となったわけである。それから、英文共著の出版は26年度に延期したため、その原稿の執筆に伴う英文校正の費用なども25年度内の支出と変更した関係で、その予算も繰越となっている。以上各点を踏まえ、25年度の使用計画は概ね次のようなものになる。 海外における資料調査(2~3回で、それぞれ10日間程度)を集中的に実施する予定であるため、そのための出張経費が旅費に含まれている。また、外務省外交史料館や国立国会図書館などにおける国内資料調査も継続する予定であり、そのための交通費なども旅費に含まれている。 日本国内及び海外における資料調査の過程で、文書の画像を大量に撮影し、それらをパソコンでPDF化などのデータ処理を行う必要があるが、現在使用されているパソコン及びデジカメはいずれも購入後3~4年以上経っており、老朽化が進んでいる。データの保護や効率的な処理のため、ノートパソコンなどの新規購入も検討しており、その費用を物品費に計上している。 平成25年度は英文論文の校正及び資料データの整理作業などが予定されており、そのための人件費を確保する必要がある。 平成25年度に、外交史料館のほか、国会図書館の資料を大量に利用することが予想されており、そのための資料複写費用も計上されている。
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