研究課題/領域番号 |
23530182
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
潘 亮 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80400612)
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キーワード | 国連外交 / アジア・アフリカ外交 / ユネスコ協力 |
研究概要 |
今年度は本研究の第三ステージに位置付けられており、史料調査、論文及び共著の執筆という二つの方向で作業を同時進行してきた。 (1)史料調査については日本国内における史料収集を継続させる一方、7月末から8月にかけて、パリのユネスコ本部文書館において日本とユネスコとの関係に関する文書を調査し、これまでの研究で利用されたことのない貴重なデータを多数発見・蒐集した。更に、この調査の過程で戦前の国際連盟傘下にある文化機構への日本の協力との比較分析を行う必要性を痛感したため、当初台湾において実施する予定の史料研究を次年度に回すこととし、代わりに2月中旬から10日間をかけて先に国連ジュネーブ本部の国際連盟文書館における調査を実施した。この二回の調査を通して延べ2万頁近くの文献が入手でき、これらを論文や共著の執筆に生かしていきたい。 (2)本年度中は前年度に続き、研究成果の執筆作業がかなり急ピッチで進められている。その成果の一部として、まず前年度から修正を重ねてきたデタント期アジア太平洋地域における多国間外交と日豪関係に関する論文は『冷戦変容期の日本外交-「ひよわな大国」の危機と模索』(波多野澄雄編)と題する共著の一章としてミネルヴァ書房から2013年8月に刊行された。更に、同じく本研究の一環として執筆した冷戦期日本の国連外交とアジア・アフリカとの関係についての論文は『グローバル・ガバナンスと日本』(細谷雄一編)と題する共著の一章として中央公論新社より2013年11月に刊行された。 (3)更に、冷戦期日本の国連外交全般及び国際文化組織に対する日中両国の政策の比較研究(英語)に関する口頭発表を外務省外交史料館研究会(2013年9月)並びにオックスフォード大学主催のワークショップ(2014年1月)でそれぞれ行い、本科研費プロジェクトをめぐって日本国内外の専門家と活発に意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の予定通り、論文の執筆や史料調査の両方で順調に作業が進んでおり、論文2点を共著の章として刊行された。この2点の論文はいずれも平成24、25年度に実施した史料調査を活かす形で作成され、オリジナリティーが高く、そこに次年度以降の研究につなぐヒントも多く含まれている。更に、国内外の研究会やワークショップにおいても積極的に成果を発信し、特にオックスフォードのワークショップにおける報告は今後英文共著の一部に発展させることになっている。 一方、執筆中の論文を優先させたため、台湾及び日米豪英四カ国関係に関する史料調査は次年度に移行させることにしたが、プロジェクト全体の研究に支障をきたすことはなく、来年度の調査が終了次第、その成果を速やかに現在準備中の論文原稿に反映させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は本プロジェクトの最終ステージを迎えることになっており、目下進めている複数の研究を次のようにまとめ上げたいと考えている。 (1)日本と国際文化教育組織との協力に関する比較研究は既に二年間進めてきており、2014年度末までにその成果を英文共著(ケンブリッジ大学出版会2015年に刊行予定)の一章としてまとめあげ、編集者に提出する予定である。そのための史料調査も台湾、必要あれば、ヨーロッパの文書館において行いたい。 (2)冷戦期日本の国連外交に関する短篇の論文は既に3本(いずれも共著の一部として)刊行されたが、2014年前半はこれらをベースにする単著の執筆準備に取り組みたい。特に史料面の不足については引き続き、外交史料館を中心に調査を実施していく考えである。他方、既に出版社との接触も始まっており、2014年度中に出版元を決めたいと考えている。 (3)上記(1)及び(2)の研究を進めるにあたって、日本国内外の研究会やワークショップなどの場を借りて成果の一部を機会あるごとに発表し、同僚研究者の意見を求める所存である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度にそれまで本科研費プロジェクトの一部として進めてきた複数の研究課題が論文の総仕上げ段階に迎えることになっており、執筆を優先させたため、当初予定した四カ国関係に関する史料調査は次年度に実施することを決定した。また、台湾の文書館における史料調査についてはスイスでの調査を先に実施した結果、その分の予算も次年度に使用することになった。また、史料調査用の設備に関し、長期の使用によって老朽化が進む史料撮影用カメラの新調も予定されていたが、データ処理の利便性から本年の調査にあたって引き続き古いカメラを使用していたが、こちらも来年度買い替えを行うつもりである。したがって、今回の繰越しはいずれも研究上の都合で生じた実施順番の変更に由来したものであり、研究内容の変化を意味するものではない。 次年度において概ね次のような計画で予算を使用したい。 (1)史料調査については本年実施できなかった台湾、及び四国関係の史料調査を実施し、更に、英文論文執筆の状況に応じて、パリまたはジュネーブにおける補足的な調査も実行する予定である。(2)現在使用中の史料撮影用のカメラレンズがかなり老朽化しており、史料を正確に写せない問題も時々生じている。そのため、新しい文書撮影用のカメラを購入する計画がある。(3)来年度中に完成する予定の英文または和文の原稿校正に使われる費用も確保しておきたい。(4)書籍の刊行時期の問題で2013年度に購入できなかった二次文献(特に英語及び中国語の文献)を2014年度内に集中的に購入を済ませておきたい。
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