平成26年度は一連の研究の最終ステージに当たり、これまでの研究成果のまとめと今後の研究へのつながりの両面を意識しながら、次のような作業を進めてきた。 (1)史料面において、平成26年7月には今まで紹介状などの問題で延期となっていた台湾国史館並びに中央研究院近代史研究所文書館における史料調査を実施し、冷戦期日本の対国際機関外交に関係する台湾側の史料を凡そ5000ページ閲覧・複写することができた。更に、平成27年2月と3月に、最近、国連関係の史料を大量に解禁しているイギリス国立公文書館(ロンドン)とオーストラリア国立公文書館(キャンベラ)においてそれぞれ調査を行い、国連における日本の外交活動を記録する貴重な史料を多く入手できた。海外における調査と同時に、外務省外交史料館を定期的に(月1~2回程度)通いながら、史料調査を続けてきた。 (2)上記の調査から得た史料に基づいて、平成26年度中は主に冷戦期日本のユネスコ協力に関する英文論文の執筆作業に専念していた。この論文は戦前及び冷戦期の国際文化組織に対する日本政府及び知識人の態度を「国際主義」という文脈で比較し、その上、中国のケースとも比較させ、日本の国際組織との関係を思想面、更に、東アジアという地域的な枠組みの中でとらえ直す新しい試みである。平成27年1月までに原稿を仕上げ、ケンブリッジ大学出版会より平成28年度に共著の一章として刊行される予定である。 (3)更に、冷戦期日本の国連外交に関する単著の執筆準備も順調に進んでおり、一部の内容については既に執筆を始めている。他方、冷戦期のユネスコをめぐる日中両国の関係に関する日本語のジャーナル投稿論文も執筆作業を開始しており、平成27年7月の脱稿を目指している。
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