研究課題/領域番号 |
23530186
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三浦 聡 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10339202)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | グローバル・ガバナンス / 国連グローバル・コンパクト / 制度起業家 |
研究概要 |
本研究は、国際制度のなかでも非国家主体を中心とする制度がいかに作られ発展するかを明らかにする。本研究は、制度を構築し、それを発展させようとする主体を「制度起業家」と呼び、制度起業家がステークホルダーとの相互作用を通じて制度をいかに発展させるかを検討する。その目的のために、事例として国連グローバル・コンパクト(GC)を取り上げ、制度起業家としての同事務所がいかにGCを構築し、企業などによるGCの受容を促したかを一次資料、二次資料、関係者への聴き取り調査を通じて明らかにする。 理論的には、ガバナンス論、制度論、企業の社会的責任に関する最新の研究を読み込むことにより、GCの実効性と正統性が構築される過程を包括的に把握するための分析枠組みを構築することを進めている。 実証的には、(1)GCに関する一次資料と二次資料の収集、(2)GCの関係者および参加日本企業への聴き取り調査とその分析、(3)GC事務所での業務およびGCが開催する会議への参加を通じた参与観察に基づいて、GCの展開と現状の把握を進めている。 (1)について、一方でGCのウェブサイトやGC事務所の資料室を通じてGCのパブリケーションを収集し、他方で電子ジャーナルで関連文献を収集している。(2)について、一方で2011年9月以来GC事務所スタッフへの聞き取り調査を行い、他方で2012年2月に日本のGC参加企業およびGCジャパン・ネットワーク事務局スタッフへの聞き取り調査を行った。(3)について、一方で2011年11月にはCSR会議(於ソウル)、GC日中韓円卓会議(於ソウル)、PRMEアジア・フォーラム(於北京)、2012年3月には女性のエンパワメント原則」年次会合に出席し、他方で2012年1月からGC事務所に滞在し業務協力を行いつつ、GCの動向の把握を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的の達成度を測る基準として、(1)理論的分析枠組の構築、(2)GCに関する一次資料と二次資料の収集、(3)GCの関係者および参加日本企業への聴き取り調査、(4)GCが開催する会議への参加を通じた参与観察、の4つが挙げられる。 (1)について、当初は学会提出論文を改稿して学術誌に投稿する予定であったが、これは実現していないので、「遅れている」と評価できる。他方で、(2)~(4)について、2011年9月から2012年8月までニューヨーク市立大学(CUNY)にて在外研究を行う機会、とくに2012年1月から6月までGC事務所(在ニューヨーク)に常駐して業務協力と研究を行う機会を得たことにより、「当初の計画以上に進展している」と評価できる。 すなわち、(2)について、一次資料についてはGC事務所の資料室やGC事務所の内部資料へのアクセス、二次資料についてはCUNYの電子ジャーナルへのアクセスを得ている。(3)について、GC事務所スタッフには時間を見て聞き取り調査を行っている。GC参加日本企業には2012年2月に一時帰国して10社に聞き取り調査を行った。(4)について、「研究実績の概要」欄で上げた四会合への参加に加えて、GC事務所での参与観察とアクション・リサーチを行っている。GC事務所への常駐を通じて、(2)~(4)は「当初の計画以上に進展している」と評価できよう。 以上をまとめると、基準(1)については「遅れている」と評価できるものの、基準(2)~(4)については「当初の計画以上に進展している」と評価できるので、全般的には「おおむね順調に進展している」と評価することができよう。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2012年6月末までGC事務所に滞在して参与観察とアクション・リサーチを続ける。また、2012年8月末までCUNYで在外研究を遂行するので、それまでにGC事務所スタッフへの聞き取り調査を継続する。その間、2012年7月には日本に一時帰国して、東京にて開催される国際会議において、GC参加日本企業の聞き取り調査の結果を分析したペーパーを提出・報告する予定である。 2012年9月に帰国後は、在外研究中およびGC事務所への滞在中に収集した各種資料の分析を本格化させる。また、帰国後もGC事務所スタッフと密にコンタクトを取り、今後アナウンスされるGC関連の各種会合に参加する予定である。 以上のように、2012年8月末までは資料の収集に重点を置き、同年9月以降は資料の分析、理論的分析枠組の構築、理論編と実証編の執筆に力点を置く予定である。 なお、23年度に使用する予定だった研究費の多くはニューヨークへの旅費・滞在費であったが、当地で在外研究を行ってきたためにその費用が不要となった。24年度はGCのCorporate Sustainability Forum(於リオデジャネイロ、6月)、GC日中韓円卓会議(於ソウル、11月頃予定)、「女性のエンパワメント原則」年次会合(於ニューヨーク、2013年3月)などに出席の予定である。 なお、研究計画に関連して、GC事務所ではPRME(責任ある経営教育原則)チームの業務に協力しており、今後もPRMEとの関わりを通じて、企業にサステナビリティの価値を埋め込むことを目標とするGCだけでなく、ビジネススクールや大学に同様のことを行うことを目標とするPRMEも研究の対象とする。ただし、PRMEはGCの派生イニシアティブの1つであるので、これは研究計画の変更というよりも、GCのケースの一つとしてPRMEを選択すると位置づけられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、主に「今後の研究の推進方策」で挙げた会合への出席のために使用される。加えて、2012年9月に帰国後はGC参加日本企業への聞き取り調査を再開する予定であり、主に在京企業への聞き取りのための国内旅費にも使われる。
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