研究課題/領域番号 |
23530186
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三浦 聡 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10339202)
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キーワード | 国連グローバル・コンパクト / グローバル・ガバナンス / 制度起業家 |
研究概要 |
平成24年度は、拙稿(共著論文、Satoshi Miura and Kaoru Kurusu, "Why Do Companies Join the United Nations Global Compact? The Case of Japanese Signatories"を執筆し、平成24年7月には東京において行われた国際会議でその報告を行った。会議でのコメントを受けて拙稿の改稿を続け、平成25年2月に終えた。本論文は国際的共同研究の成果として、編著として刊行すべく、現在は海外出版社のreviewerによる査読を受けている。 本論文は、国連グローバル・コンパクト(UNGC)に加盟する日本企業33社の担当者へのインタビューに基づき、それら企業がUNGCに加盟した動機を明らかにするものである。本論文はまた、UNGCへの加盟の動機を探ることを通じてUNGCの展開が企業に及ぼす影響をも明らかにしている。 「企業がなぜUNGCやCSRに関する他の自発的イニシアティブへに参加するか」という問いに対しては、理論的・統計的分析が主になされてきた。これに対して、本論文はインタビューによる質的分析に基づく点が特徴である。論文では、企業の動機を「内向的(inward)―外向的(outward)」、「反応的(reactive)―先取的(proactive)」の二次元に基づくマトリックスによって類型化し、企業の動機を体系的に論じた。方法的にも内容的にも、本論文は他に類を見ないものであり、その意味でUNGCに関する実証的・実践的な貢献だと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はUNGCの展開を理論的・実証的に跡づけることを目的としている。その際、理論と実証の一方に偏るのではなく、一次資料やエスノグラフィーを通じてUNGCの実際の活動を把握し、そのデータと理論とを往復することが本研究の特徴である。 その試みの一つが、上述のようにインタビューに基づくUNGC加盟企業の研究である。いま一つは、UNGCの様々なイベントやUNGC事務所での参与観察に基づく研究である。後者については、平成25年1月から6月にかけて、ニューヨークにあるUNGC事務所にResident Researcherとして滞在し、研究と実務協力を行った。UNGCについては、実証的な研究が未だに少なく、ましてや参与観察に基づく研究は存在しない。この種の研究の欠如はグローバル・ガバナンス論についても言えることであり、その意味で本研究は貴重なデータに基づくグローバル・ガバナンス研究になりつつあると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はデータと理論の往復を通じて、UNGCの展開を分析する枠組みをアブダクティブに構築することを目指す。この点に関しては、制度起業家に関する分析枠組みを構想中であり、平成25年10月に開催される日本国際政治学会年次大会において草稿の提出と報告を予定している。 また、UNGCのスピンオフ・ネットワークであるPRME(責任ある経営教育原則)を事例として取り上げ、UNGCの展開を別の角度から論じたい。本テーマについては、PRMEに関わる実務家との共著論文の執筆を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年9月から平成24年8月にかけて、日本学術振興会の「頭脳循環を活性化する若手研究者海外派遣プログラム」により、ニューヨークにて在外研究を行う幸運を得た。これにより申請時に主にアメリカへ出張するために必要としていた海外渡航費が不要となったため、当該助成金が生じた。 今年度は当該助成金によりニューヨークに約1ヵ月間滞在して、UNGC事務所などでの現地調査を再度行う予定である。 また、スロベニアのブレッドで開催されるPRMEサミットをはじめとするUNGCやPRME関連の会議にも参加を予定している。翌年度分として請求した助成金は、主にこの目的のために活用される。
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