最終年度にあたる平成25年度は、前年度より進めてきた「セキュリティ・ガバナンス」の理論的アプローチを用い、西アフリカの紛争予防事例を対象に分析した研究内容を国内と国外の両方で報告すると同時に、その成果として複数の論文を発表した。その結果、当該研究期間の3年間において、関連論文4本(日本語3本、英語1本)の執筆と、関連研究報告5回(国内報告1回、国外報告4回)を実施した。 本研究の目的は、「国家の失敗」の度合いが著しいがために武力紛争が多数発生しているアフリカの諸事例(とくに西アフリカ地域)に着目し、紛争終結後(ないし紛争中)の「セキュリティ・ガバナンス」の構築に向けた取り組みについて概観しつつ、こうした枠組みに対する非国家主体による関与について検討することであった。「セキュリティ・ガバナンス」についての萌芽的研究は、冷戦終結後のヨーロッパ内部における安全保障システムの変容をよりよく捉えるために用いられた研究手法の一つであった。本研究はこうしたヨーロッパ域内を対象とした分析アプローチをアフリカ地域にも対象を広げつつ、分析アプローチ自体の再検討を試みた点において重要な学術的意義を持ち合わせるものであった。 そのような目的に照らしつつ、本件研究代表者は、昨年度の米国学会International Studies Association (ISA)、フィンランドのタンペレ大学平和研究所での報告に加え、最終年度にはケニアにあるナイロビ大学外交国際問題研究所ならびにデイスター大学などでの報告を実施し、その成果を学術雑誌Hiroshima Peace Scienceなどで公表した。
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