研究課題/領域番号 |
23530189
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
沖村 理史 島根県立大学, 総合政策学部, 教授 (50453197)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / ガバナンス / 気候変動問題 / 国際関係論 / 政治学 / 環境問題 |
研究概要 |
先進国に対し、2008-12年(京都議定書第一約束期間)の温室効果ガス排出の数値目標を定めた京都議定書では、2013年以降の数値目標は何ら規定されていないため、京都議定書が発効した2005年以降、2013年以降の先進国の数値目標、及び経済発展が著しい発展途上国の目標について国際交渉が続けられてきた。2009年に開催された気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)は、交渉の期限とされていたため、オバマ大統領や鳩山首相をはじめ各国の首脳級が参加した重要な会議となったが、大きな成果は得られなかった。その結果、2013年以降の国際制度のあり方は不透明な状況にある。 本研究の対象は、気候変動に関する地球環境ガバナンスシステムとしての気候変動枠組条約体制である。2012年末に終了する京都議定書第一約束期間以降、気候変動対策の国際制度は、法的拘束力を持つ数値目標が存在しない状況を迎える可能性が高い。そこで平成23年度は、調査代表者は気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)に参加し、政府間交渉で模索されている地球環境ガバナンスシステムの決定過程について情報収集を行った。COP17では、最終的に一部の先進国は京都議定書第二約束期間の設定に合意し、同時に米国や発展途上国を含む全ての主要排出国を対象とした国際制度を2020年以降機能させることが合意された。これにより、2013年以降の空白期間は一定程度抑制されることとなったが、具体的な制度の内容は、今後の交渉にゆだねられることとなった。 また、気候変動枠組条約を補完する地域的、国際的な取り組みについても、文献調査を中心に行い、その成果を原稿にまとめた。これにより、数値目標が失効することにより機能が低下する地球環境ガバナンスへの国際社会の様々な対応を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)に参加し、事例分析に必要な情報収集に努めた。具体的には、2013年以降の京都議定書第二約束期間に先進国に対してどのように数値目標が設定されようとしているのか、さらには米国や中国などの主要発展途上国を含むグローバルな地球環境ガバナンスシステムを今後どのように作りあげていくのかについて、政府間交渉会議で議論されている内容を調査した。また、EUにおける域内排出枠取引制度(EU-ETS)や北東アジア地域における地域的な取り組みなどについても文献調査を行い、グローバルな地球環境ガバナンスシステムと、地域的な地球環境ガバナンスシステムの関係性についての検討も行った。このうち、北東アジアにおける国際環境制度の環境ガバナンスシステムとしての役割と課題については、論文にまとめた。 ただ、東日本大震災により平成23年度の科研費が3割カットされる可能性があったため、夏に行う予定だったEU-ETSに関する聞き取り調査は実施しなかった。その分の調査旅費は平成24年度に繰り越し、調査を行うこととしている。これにより、2013年以降の国際的な気候変動政策がどのような国際的・地域的制度を通じて実行されていくのか情報収集を行う。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、気候変動枠組条約の政府間交渉会議に参加し、交渉の行方をその最前線で調査すると共に、交渉に参加している多様なステークホルダーの主張に関する情報収集を行う。具体的には、地球環境ガバナンスシステムの制度設計が議論されている気候変動枠組条約締約国会議と作業部会に参加し、2013年以降の京都議定書第二約束期間の内容、および米国や主要発展途上国をも含むグローバルな地球環境ガバナンスシステムとして2020年以降機能させることが目指されているダーバン・プラットフォームの内容について、政府間交渉会議での議論を取材する予定である。これらの実態調査を踏まえ、日本やカナダといった京都議定書第二約束期間に数値目標が設定されない国々が生じることにより、機能が低下する地球環境ガバナンスの変容の現状を、引き続き調査することとする。また、同時並行して文献調査を行い、現状の地球環境ガバナンスシステムについての一定の知見をまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、平成23年度に調査できなかったEUにおける域内排出枠取引制度(EU-ETS)や、産業界や研究機関の間で議論・提案されている次世代炭素市場の制度設計に関する議論の状況を調査するために、5月と9月に開催される気候変動枠組条約補助機関会合と作業部会会合に参加し、主に欧州からの参加者に対して聞き取り調査を行う予定である。また、11~12月に行われる気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)に参加し、2013年以降の京都議定書第二約束期間にどのように数値目標が設定される予定なのか、さらにはCOP17で設定されたダーバン・プラットフォームに基づき、米国や主要発展途上国が含まれるグローバルな地球環境ガバナンスシステムがどのように設計されていくのか、政府間交渉会議における議論を取材する予定である。また、同時並行して文献調査も行う。したがって、研究費の多くは旅費に用いられ、一部は文献調査に必要な書籍、論文購入に充てる予定である。
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