研究課題/領域番号 |
23530196
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
勝間田 弘 金沢大学, 法学系, 准教授 (40579108)
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キーワード | 国際関係論 / 構成主義 / 東南アジア諸国連合(ASEAN) / 規範 |
研究概要 |
今年度(H25/2013年度)は、データの整理と議論の構成という二つの側面において、一定の進展があった。 まずデータの整理についてだが、前年度(H24/2012年度)に集めたデータには不十分な点が多かった。データベースを活用して研究を進めた訳だが、システマティックに包括的なデータを集める作業に問題があった。前年度が終了した時点で、暫定的な結論は見えてきたものの、集めたデータは不十分なものだという事実が明らかになっていた。 そこで今年度は、不十分なところを埋める作業を進めた。なお、データ収集の狙いは、国際社会における東南アジア諸国連邦(ASEAN)のステータスの変化を捉えることである。研究対象となっている1990年代から2000年代にかけて、ASEANの評価には何か変化があったのか。あったとしたら、それは如何なる性質の変化であり、それはいつ頃からの現象だったのか。これらの論点を探るために、引き続きデータベースを活用して研究を進めた。 次に、議論の構成についてだが、前年度の構成案には複数の問題点があった。この問題は、理論と事例という二つの要素について指摘できた。前者については、社会心理学の援用が好ましい形でできていなかった。社会心理学の実験結果を複数カバーしたのはよいが、不必要なものにこだわりすぎて、必要性が高いものの精査が不十分であった。後者については、1990年代から2000年代の期間に、ASEANの政策がどのように変化したのかについての理解が不十分であった。より具体的に述べるなら「国家主権」というものに対するアプローチの変化について、若干の認識不足があった。 そこで今年度は、これらの問題点を改善していった。原稿の下書きに修正を加える作業を進めた。今年度に整理した全体的な議論の構成は、最終的な研究成果に反映させていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の通り今年度(H25/2013年度)は、データの整理と議論の構成という二つの側面において、一定の進展があった。だが、これら二つの側面ともに国内における課題だといえよう。海外での調査については、進捗状況が芳しくない。この背景には、学務が多忙であったという事実がある。学内での仕事も重要なので、この遅れについては仕方ないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題は、データの整理、議論の構成、海外での調査、原稿の執筆という四つの側面から検討できる。第一に、データの整理であるが、まずは、具体的に何をやり残しているのかを明らかにしていく必要がある。事例研究の全体像を意識しながら、臨機応変に必要な作業を明らかにし、取り組んでいく必要がある。第二に、議論の構成であるが、これについても臨機応変に対応していく必要がある。理論と事例の組み合わせは、常に修正を繰り返しながら整えていくしかない。第三に、海外での調査であるが、まずは具体的に何が必要であり、何が必要でないのかを明らかにする必要がある。海外での調査については、データの整理と並行して検討していきたい。第四に、原稿の執筆であるが、これが進まなくては研究は完成しない。国内外での学会発表を意識しながら、事例研究の成果を記述していきたい。 以上の全てにおいて、今年度に行った学会発表の成果をいかしていく。学会発表については、年度のはじめに米国の国際政治学会(ISA: International Studies Association)で論文を発表した(サンフランシスコにおいて2012年4月6日、"Humanitarian Security in Southeast Asia: How Serious is ASEAN?"を発表)。年度の中頃には、日本の国際政治学会で論文を発表した(新潟において2013年10月26日「規範と国際ステータス ――いつ途上国は先進国を真似るのか?」を発表)。さらに、年度の終わりには、米国の国際政治学会(ISA)で別の論文を発表した(トロントにおいて2014年3月29日、"Why are NGOs in Southeast Asia Weak?"を発表)。これらの学会発表では、参加者から有益なコメントを得ることが出来た。今後の研究に反映させていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
学務が多忙であり十分に計画を遂行できなかったため。 データの整理を続け、国内外における課題を明らかにし、柔軟に対応していく予定である。
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