研究課題/領域番号 |
23530197
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平川 幸子 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 助教 (80570176)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 中国 / 台湾 / マレーシア / フィリピン / タイ / オーストラリア |
研究概要 |
本研究は、冷戦期のアジア太平洋地域諸国が、中台分裂に際し、「一つの中国」原則の下、外交関係にない政府とも経済社会関係で実質的関係を構築、維持していた現象を、「日本方式」という分析概念を提示しながら検証する。「日本方式」とは、外交関係にない政府とも、政経分離方針を守りながら非政府窓口機関を通じて実質的関係を持つことを指している。1972年の日中国交正常化に伴う台湾処理方式が、その後の諸国のモデルとなったと考えられる。 申請時において本研究は二つの目標を掲げていた。第一目標は、「日本方式」を普遍的な分析概念として定義を精緻化し理論化すること。第二目標は、二年間のタームで行う歴史的資料の収集と解読である。特に1970年代に、台湾と東南アジア諸国が、断交後に領事館に代わるものとして民間窓口機関を交換設置するに至った経緯は、正式な外交資料として必ずしも残されていない。当事者インタビューなどにより記録を残すことは歴史的価値のある作業である。 初年度は、第一目標に重点を置いて実績を残した。「日本方式」の起源となる1960年代の日中関係について、政経分離と個人事務所窓口方式で貿易関係を成立させた池田政権の対中政策を検討し論文発表した。研究発表過程で理論化作業を詰めていき、まとめとして、3月には博士論文を発展させる形で、単著『「二つの中国」ジレンマと日中関係』を入稿した。勁草書房より6月出版予定である。 第二目標に関しても、ロンドン、クアラルンプル、台湾において追加調査と下調べを行い、現地コーディネーターに具体的な協力依頼を開始した。次年度においては本格的な資料調査、インタビューを実施することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定よりも早く機会を得て単著を出版する機会を得た。「日本方式」というオリジナルな分析視角を構築し、資料的制約を残しつつも事例研究を試みた書籍を出版することで、研究の意義が広く理解され議論されることが期待できる。また、単著の執筆、出版を通して理論化作業だけではなく、現時点で所有する資料の再点検と整理を行うことができた。資料の所在や信憑性、制約を確認でき、不足箇所を特定できたことで、今後の資料、インタビュー調査の基礎を固められた。
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今後の研究の推進方策 |
台湾とASEAN諸国との関係に重点を置いて、第二目標で掲げた資料調査を遂行したいと考える。この時期、マレーシアが中心となってASEANは連携を取りながら対中政策(台湾政策を含む)という見解に立って、糸口としてマレーシア外務省シンクタンク研究員に協力を依頼し、当事者へのインタビュー調査をASEAN各国で展開していく。それと同時に、台湾側の資料、当事者インタビューを突き合わせる形で進めていく。台湾でも現地コーディネータ―としてシンクタンク研究員に協力を依頼した。(なお、当時のマレーシアの地域外交イニシアチブについては、平成23年5月に研究論文を出版した。)
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究が対象としている外交関係のない国家同士の民間経済関係の解明には、正式資料とともにインタビュー調査が欠かせない方法である。実施に至るまでの下調べや人的ネットワークづくりなど予備的段階の時間が必要であり、本格的調査は平成23年度には実行困難であった。申請者は学内での所属変更があり新規研究費も利用可能となったことから、当年度分で予算計上していた分を基金化し平成24年度において効果的に利用することにした。なお、申請時にはカナダやオーストラリアなどの外交資料調査にも触れているが、平成24年度においては外交資料の得られにくく研究価値の高い諸国事例から優先的に調査を実施したいと考えている。
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