研究課題/領域番号 |
23530199
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
植木 千可子 (川勝 千可子) 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 教授 (50460043)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 国際政治学 / 国際関係理論 / 安全保障論 / 米国 / 中国 / 英国 / 日本 |
研究概要 |
本研究の目的は、脅威認識と依存の関係を分析することにある。依存関係の有無によって脅威認識の形成にどのように変化を及ぼすのかを明らかにすることを目指している。具体的な目的としては、第1には、依存と脅威認識との関係を明らかにする。他者に対する脅威認識の形成が、依存関係の有無によって変化するかどうかを考察する。脅威認識は、国際関係論における重要な概念であるにも関わらず、十分な研究がされておらず、これまでの研究は応募者の研究を含めて、主に「パワー」を中心に検討されてきた。本研究は、依存という新たな変数に着目し、脅威認識の形成過程に関する研究をさらに発展させることを目指している。本年度は、基礎的なデータの収集と文献調査を中心に研究を進めた。具体的には、米中関係を中心に、1980年代から現在に至る米国の対中認識の変遷を調査した。とくに政策担当者など、外交、安全保障政策にかかわるエリートの認識を追った。同時に、米国の政策決定者が中国に対して依存していると認識していたと思われる時期の特定を進めた。その際、(1)米国が中国に依存していた時期、(2)中国が米国に依存していた時期、(3)相互依存の関係が存在していた時期に分類するよう進めた。日中関係についても同様の作業を進めた。日本のエリートの認識については、日本国内において、過去の政策担当者を中心に聞き取り調査も実施した。この調査については、次年度以降も継続する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、データ収集と既存の研究の調査・分析の実施にあてており、その計画に即して、資料に基づく調査を実施した。脅威認識の変遷に関するデータの収集、分析をおおむね順調に行った。このデータは、今後の脅威認識と依存の関係を明らかにしていく上での基礎的なデータとなるものである。
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今後の研究の推進方策 |
依存が脅威認識に作用する場合、考えられるメカニズムは上記「研究実績の概要」で述べた依存関係の類型(1)(2)(3)によってそれぞれ異なる。米国を例に取ると、(1)の米国が中国に依存している時期というのは、リアリズムの視点から考えると脆弱性が増し脅威を感じることが予想される。(2)の場合は逆である。(3)の場合はリアリズムの視点からは(1)と(2)の複合形だが、リベラリズムの視点からは脅威認識が抑制されることが予測される。それぞれの時期にどのような認識が形成されたかによってどのようなメカニズムで脅威認識が形成されるかが推察される。次年度以降は、脅威認識と依存の関連を分析していく。米国における聞き取り調査や日本における聞き取り調査も実施し、認識の形成に依存関係がどのように作用していたかを考察する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費等:米国に渡航し、過去の政策担当者や研究者に対して聞き取り調査を実施し、脅威認識の形成に依存しているという認識が作用したか否か、どのように作用したかなどを考察する。中国においても同様の調査を実施する。日本国内においても過去の政策担当者を中心に聞き取り調査を実施する。
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