研究課題/領域番号 |
23530199
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
植木 千可子 (川勝 千可子) 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 教授 (50460043)
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キーワード | 国際関係 / 安全保障 / 脅威認識 / 国際研究者交流 米国・日本 / 国際情報交換 米国 |
研究概要 |
本研究は、脅威認識と依存の関係を分析の対象にし、依存関係の有無によって脅威認識の形成がどのように変化するかを明らかにすることを目指している。 具体的な目的としては、依存と脅威認識の関係を明らかにし、他者に対する脅威認識の形成が、依存関係の有無によって変化するかどうかを考察する。脅威認識は、国際関係論における重要な概念であるにも関わらず、十分な研究がされておらず、これまでの研究は応募者の研究を含めて、主に「パワー」を中心に検討されてきた。本研究は、依存という新たな変数に着目し、脅威認識の形成に関する研究をさらに発展することを目指している。 当該年度は、米国における対中認識について、前年度に特定した:①米国が中国に依存していた時期、②中国が米国に依存していた時期、③相互依存関係が存在していた時期の3類型に基づき、引き続き、依存関係と脅威認識の形成について調査を行った。そのうちとくに当該年度は、1970-80年代(③のケース)と1990年代(③が解消した事例)の冷戦下における脅威認識の変化について比較・検討した。また、同時期の米国の対日認識についても検討した。具体的には、当該時期の政策担当者に聞き取り調査を実施するとともに資料収集を行った。 前年度は、経済的な依存や、財政的な依存が脅威認識に与える影響を考察し、当該年度も引き続きこの影響を探った。これらについては、暫定的な観察としては、政策への影響は認められるものの、脅威認識への影響は限定的であると認められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、前年度に特定した条件(時期)区分とデータを基に依存関係が脅威認識を抑制するという作業仮説について、検証を試みた。 おおむね順調に進展しているものの、25年9月、10月に、米国及び中国等での聞き取り調査において予定していた現地協力者の協力が得られなくなったため、調査方法の見直しを検討するとともに、米国及び中国等での聞き取り調査を延期する必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
依存が脅威認識に影響する場合、考えられるメカニズムは、上記「研究実績の概要」で述べた依存関係の類型①②③によってそれぞれ異なる。①の場合、リアリズムの観点からは脆弱性が増し脅威認識が形成されることが予想される。②の場合は、逆である。③の場合は複合型で、リベラリズムの観点からは脅威認識が抑制されることが予想される。さらに④依存関係が存在しない場合、には脅威認識が強く認められることが予想されるが、④から①への移行期、①から④、または③から④への移行期に脅威認識にどのような変化が生じるのかを検討することによって、脅威認識形成のメカニズムがより明らかになることが推論される。今後は、当初の作業仮説の検証に加えて、上記のメカニズムについても検討したい。 さらに、米国の脅威認識について観察した時期の日本の対米認識、中国の対米認識についても検討し、聞き取り調査の実施、資料収集を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年9月、10月に米国、中国等における聞き取り調査等において予定していた現地協力者の協力が急遽得られないなったため、調査方法の見直しを検討するとともに、米国、中国等における聞き取り調査を延期する必要が生じた。 英語による研究成果物作成のために協力を予定していた協力者の都合で作業が延期になった。このため、次年度以降に実施することとなった。 米国への外国旅費等の使用 中国への外国旅費等の使用 英語による成果物の校閲費用等の使用
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