本研究の目的は、脅威認識と依存の関係を分析することにある。依存関係の有無によって脅威認識の形成にとどのように変化を及ばすのかを明らかにすることを目指している。 具体的な目的としては、第1には、依存と脅威認識との関係を明らかにする。他者に対する脅威認識の形成が、依存関係の有無によって変化するかとどうかを考察する。脅威認識は、国際関係論における重要な概念であるにも関わらず、十分な研究がされておらず、これまでの研究は応募者の研究を含めて、主に「パワー」を中心に検討されてきた。本研究は、依存という新たな変数に着目し、脅威認識 の形成過程に関する研究をさらに発展させることを目指している。 当該年度は、これまで収集した基礎的なデータと文献資料の分析を進めると同時に、米国の対中認識の聞き取り調査等を依存関係の有無に着目しながら継続した。具体的には、米中関係を中心に、1970年代から現在に至る米国の対中認識の変遷を調査した。とくに①米国が中国に依存していた時期、②中国が米国に依存していた時期、③相互依存関係が存在していた時期の3類型に基づき、依存関係と脅威認識の形成について調査を継続した。加えて、日本の対中認識について同様の調査を実施した。さらに、同時期における中国の対日、対米認識の調査を実施した。具体的には、文献調査に加えて、中国において聞き取り調査等を実施した。中国の対日、対米認識の調査に関しては、日米の対中認識、意図がどのように脅威認識の形成に影響しているかについても検討した。
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